激怒のプーチン。ウクライナの越境攻撃でメンツを丸潰れにされた独裁者が加える激烈な報復

 

レッドラインを越えた報いをウクライナに与えるよう命じたプーチン

今後、ロシアがクルスク州の奪還というダイレクトな目的を追求するのか。それとも、クルスクを囮にして、一気にウクライナ軍の背後を突いてウクライナ全土への苛烈な攻撃に転じるのか?または、キーウに対して本格的なミサイル攻撃を仕掛けて、大規模な破壊に出るのか?

または、核兵器は使用しなくても、ザポリージャ原発への攻撃を加えて、間接的に核の脅威を現実のものとしてウクライナの破壊を試みるのか?

いろいろな恐怖の報復シナリオが考えられますが、ロシアがこのままやられているとは考えられず、ここ1週間ほどの展開を非常に懸念しています。

実際に、ウクライナ軍が精鋭部隊を振り分けて、クルスク州などへのロシア領内の集落へ侵攻を続ける間に、ロシア軍はドネツク州における物流の拠点であるトレツク市を攻略すべく兵を進め、同時にポクロフスク市の攻略も目指しているとの情報が入っており、安易にウクライナ軍が有利になってきていると見るのは危険です。

プーチン大統領は閣僚および軍のトップに対して「罪人は厳しく処罰されなくてはならない」と喝を入れ、ウクライナへの攻勢を強め、かつウクライナによるロシア領への攻撃というレッドラインを越えたことへの報いをウクライナに与えるように命じています。

また核兵器使用のための部隊の司令官にも即時対応態勢を命じたという情報も入ってきています。

ゼレンスキー大統領は繰り返し「今回の攻撃でロシアのレッドラインが無効であることを証明した」と発言し、「NATO諸国は過剰にロシアを恐れることなく、今こそウクライナを全力で支援し、ロシアの企てを挫くときだ」と訴えていますが、様々な情報を総括すると、現時点でNATO諸国内にそれを本気に捉える国々はなく、また供与した武器がロシア領内への攻撃に使用されていることで、自ずから対ロ戦争に引きずり込まれることを恐れ、ウクライナ支援を控えているようです。

NATOの事務局の専門家によると「ロシアの設定したレッドラインは存在し、今回のウクライナによる越境攻撃はロシアに、ウクライナのみならず、NATO諸国への攻撃を行う口実を与えてしまったのではないかと恐れている。核兵器の使用はNATOの非核兵器によるロシアへの攻撃に繋がると警告しているため、核兵器の使用には非常に慎重になるものと“望んで”いるが、問題はNATOの即応能力だ。迅速に対応できるのであれば、ロシアの暴発(核兵器の使用)を防ぐことはできるかもしれないが、トルコやハンガリーなどNATOの全会一致の制度を政治利用して自国の要求を通す傾向や、ロシア・ウクライナに隣接する東端の加盟国は、有志国で独自の対応を取ろうとする動きもあるため、即応性にはマイナスとなり、ロシアに時間稼ぎを許す可能性がある。NATO諸国はロシアの核兵器使用という最悪の事態にあらかじめ備えておき、使用の際に具体的にどのような行動を取るかを決めておく必要(その際に議論は必要なく、事務局長のサインで発動できるようにしておく必要)がある。それは自国軍の独自性を失いたくないNATO加盟国には、実際には受け入れられないだろうが」と率直な懸念が存在します。

そしてNATO事務局的には「今回のウクライナの越境攻撃は、決して褒められたものではなく、ゼレンスキー大統領はバックアップの確約と確証もないまま、ロシアが設定したレッドラインに挑戦してしまった。ウクライナが再三要求する長距離兵器をロシアへの攻撃に使用する許可については、正直認めるべきではないと考える」とのことで、ウクライナは「NATOは助けてくれるだろう」という淡い期待をベースに大胆な決断を行ってしまったことが分かります。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print

  • 激怒のプーチン。ウクライナの越境攻撃でメンツを丸潰れにされた独裁者が加える激烈な報復
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け