習近平の「実績のなさ」がより厳しくする言論統制
中国では経済の停滞がますます進んでおり、人民の不安と不満が高まりつつありますが、それだけに、一党独裁の中国共産党としては、中国に対する外国からの批判は潰さなくてはならないわけです。
習近平は、建国の父である毛沢東や、改革開放路線を切り開いた鄧小平、その恩恵で中国経済の急成長の恩恵を受けた江沢民や胡錦濤に比べて、功績がなにもありません。経済も衰退基調です。
それだけに、なんとかして「偉大な指導者」として認められるために、かつてどの指導者も実現できなかった「台湾統一」を強引に進めようとしている一方で、言論を統制し、批判を封殺するわけです。そもそも独裁政権では言論統制は当たり前ですが、実績がないだけに、統制がより厳しくなります。
それだけに、外国人ジャーナリストへの抑圧も強くなっていきました。報告書によれば、欧米のジャーナリストが中国を離れるペースは近年加速しており、ニューヨーク・タイムズ紙は6年間で中国人スタッフを10人から2人に、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は15人から3人に減らし、かつて2人の記者を抱えていたワシントン・ポスト紙などは、現在はゼロだとのこと。北京駐在の韓国メディアも2年間で40数人から30数人に減りました。
言うまでもなく、中国ではさまざまな活動が監視されています。それは外国人でも例外ではありません。
今年4月、中国外国特派員クラブは101人のジャーナリストを対象にした調査結果を発表しましたが、そのうちの71%が携帯電話が中国によってハッキングされた可能性があると回答しています。また、81%が取材中に中国当局から妨害や嫌がらせを受けたことがあると回答しました。
2022年の北京五輪の際、各国は私用のスマートフォンやパソコンを持ち込まないよう促しましたが、それは中国当局による監視や情報の抜き取りなどのスパイ行為を防ぐためでした。その懸念は、現在の在中国外国人記者も抱えているということなのです。
中国でスパイ容疑で捕まる外国人などは、私用の情報機器から情報が抜き取られ、過去に中国に対して批判的なメールなどを送ったりしていたことで、嫌疑をかけられた可能性も少なくありません。
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