大統領選後に何らかの変化を見せることになる米の対中東政策
アメリカ政府の設定したレッドラインを断りなく越えたという意味では、イスラエルのネタニエフ首相も同じ轍を踏んでいると思われます。
昨年10月7日のハマスによるイスラエルへの奇襲と人質事件は、人質にアメリカ人が含まれていたこともあって、アメリカ政府の激しい怒りを引き起こしましたが、その後、自衛作戦と報復という旗印の下にイスラエルのネタニエフ政権が実施しているガザへの侵攻の激化と、アメリカが強調する緊急人道支援の実施と強化についての要請を無視していることで、次第にアメリカ政府による対イスラエル支援の結束に歪みが生じてきています。
国連安全保障理事会では一貫して対イスラエル制裁決議をブロックし続けているものの、グリーンフィールド国連大使のガザ情勢に対する発言の中身は変わってきており、ついには行き過ぎたイスラエルによる一般市民への攻撃に対して批判的なニュアンスを示すようになってきています。
その背景にはアメリカが国際社会において孤立して生きていることが国内でも認識され始めたことと、Proイスラエルで結集してきた米連邦議会の空気感が次第に「イスラエルとの特別な関係を継続すべきかどうかを検討すべき時に来た」という方向に染まっていることがあります。
現在、トランプ前大統領もハリス副大統領もガザ問題についてハマスへの非難を続けているものの、イスラエルにも自制を強く求めるような発言が増えてきており、新大統領誕生後のアメリカの対イスラエル・対中東政策は何らかの変化を見せることになると予想されます。
そしてカタールとエジプトと共にイスラエルとハマスの間を仲介して、何とか停戦(戦闘の一時停止)と人質解放を実現しようと、再三停戦合意案を提示し、最近ではバイデン大統領の勇み足で“イスラエル提案”を自ら発表してしまうという事態も起きましたが、イスラエルのネタニエフ首相が悉く“合意”を覆したり、協議が行われている最中にもガザへの激しい攻撃を継続して仲介協議・間接交渉を潰したりと、アメリカ政府の顔に泥を塗る行為を繰り返していることで“特別な関係”が終わりを迎えるのもそう遠くないかもしれません――(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2024年9月6号より一部抜粋。続きをお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録ください)
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