国家と全国民の情報を丸ごとアマゾンに預けようとしている日本
これだけの自治体行政情報に加えて中央省庁の1,100ものシステムが抱える中身の全部をクラウド化すると言うが、それは一体どこへ向かってなのか。端的に言うと、アマゾンである。
21年9月にデジタル庁が発足すると同時に、ガバクラのサービスを提供する業者として決まっていたのは、
▼Amazon Web Services(AWS)
▼Google Cloud
▼Microsoft Azure
▼Oracle Cloud Infrastructure(OCI)
の米国の巨大IT企業4社だが、グーグル、マイクロソフト、オラクルの3社もアマゾンAWSの標準化フォーマットを使用することを条件に選抜されているので、実質的にはアマゾンの下請けである。ということは、日本は国家と全国民の情報を丸ごとアマゾンという米国の一個の私企業に預けようとしているわけで、これにはさすがに懸念の声が上がってきた。そこで河野がやったことは、一部条件を緩和して複数の国内企業でも応募できるようにした上で、昨年11月に「さくらインターネット」を第5のガバクラ・サービス会社として付け加えたが、その実力は未知数で、「日本企業もいるぞ」というアリバイづくりとさえ言われている。
欧州はもちろんこのような「情報主権」問題には敏感で、独仏などは、公開情報に関しては米国のメガITの安価なクラウドを使っても、全国民の個人情報や国益に関わる敏感な領域など枢要部分に関しては自国の事業者の技術に委ねている。もちろんアマゾンAWSもそこは承知していて、たとえばドイツに対しては、敏感部分のデータの格納領域には鍵をかけてドイツ側に渡し、自らはその中身にタッチしないという契約を結ぶなどして営業に努めているが、そんなことは建前に過ぎず、システム構築側がクライアントに分からないよう裏口を設けることなど技術的に造作もないことだと誰でも知っている。だから仮に米国クラウドに委ねる部分があってもそこでは表と裏の激しい駆け引きが展開される。
ところが日本では、「米国は同盟国だから安心だ」などという底抜けノーテンキの属国根性が政府を覆っているので、全てが筒抜けになる危険に晒されようとしている。河野は果たして、米国には「クラウド法」があり、政府が必要と認めた場合にIT大手のデータを自由に調べられるようになっていることを知っているのだろうか。
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