ドゥテルテ政権が一丸となって守った「太すぎる客」
他にも、児童への性的虐待や人身売買や偽装結婚の斡旋、詐欺や強制労働、現金密輸や資金洗浄などを繰り返し、2014年から2019年までの6年間だけで少なくとも約2,000万ドル(約30億円)を集め、自身の贅沢三昧や政治家への賄賂に使って来ました。フィリピン国内に数々の不動産を所有しているだけでなく、分かっているだけでも米カリフォルニアと米ラスベガスとカナダに、計1,100万ドル(約16億5,000万円)を超える4つの邸宅を所有しています。
アメリカ連邦大陪審は2021年11月、アポロ・キボロイを複数の罪で起訴し、逮捕状を出しました。そして、米FBIはキボロイを指名手配しましたが、彼をアメリカから守ったのがロドリゴ・ドゥテルテ前大統領でした。マルコス独裁政権時代から政治家への賄賂を怠らなかったキボロイは、常にフィリピン政権から守られて来たのです。
ロドリゴ・ドゥテルテ前大統領は2016年、テレビのインタビューで、ダバオ市内の3つの不動産と2台の車をアポロ・キボロイからプレゼントしてもらったと話しました。そして「教祖はとても気前がいい。別荘や車など何か買い物をする時は、必ず2つ買って1つを私にくれる」と笑顔で述べています。また、自身の持病の治療のため、アメリカのトップクラスの脳外科医を紹介してもらった上、高額な医療費も全額をキボロイが負担してくれたと述べました。
キボロイは2機の航空機と3機のヘリを所有しており、選挙のたびにドゥテルテ前大統領を始め、政権の中枢の政治家らに無償で提供して来ました。ここまでしてくれる「太すぎる客」なのですから、いくらアメリカのFBIが指名手配をしようとも、ドゥテルテ政権は一丸となってキボロイを守ったのです。それまでのアキノ政権が「親米反中」だったのに、ドゥテルテ前大統領に代わったとたんに「反米親中」になったのも、この「太すぎる客」を守るためだったのです。
ドゥテルテ前大統領は、アポロ・キボロイを自分の「スピリチュアル・アドバイザー」に任命し、精神的なことだけでなく、政治的な問題に関してまで、キボロイに意見を求めるようになりました。しかし、これが功を奏したのか、「麻薬密売人は裁判など受けさせずにその場で射殺しても良い」などという民主主義を無視したトンデモ政策も国民からは支持され、最後まで高い支持率を誇ったのです。
日本では「フィリピンのトランプ」などと揶揄されましたが、それはアメリカの属国である日本のマスコミの報じ方の問題だったと思います。たとえば日本の拉致問題について、ドゥテルテ前大統領は「日本は兄弟よりも大切な友人だ。北朝鮮の金正恩は大馬鹿野郎だ」と述べているのです。こういう発言を日本のマスコミが正しく報じていれば、日本からの見方も変わっていたかもしれません。もちろん、それとカルト教団との癒着の問題は別ですが。
さて、そんなフィリピンですが、現在の大統領は、ボンボン・マルコス(66)。これは通称で、本名はフェルディナンド・マルコス・ジュニア。1965年から20年間に及ぶ独裁政権に君臨した悪名高きフェルディナンド・マルコス元大統領の長男で、私物化した税金で買いあさったイメルダ夫人の3,000足もの靴のコレクションを覚えている人もいると思います。
そして副大統領は、サラ・ドゥテルテ(46)。これまた強権を振るったロドリゴ・ドゥテルテ前大統領の長女です。ドゥテルテ前大統領の任期満了に伴って行なわれた2022年5月の大統領選では、当初、出馬を示唆しましたが、すぐにボンボン・マルコス候補との連携を発表し、自身は副大統領選に出馬。そして、ボンボン・マルコス&サラ・ドゥテルテのタッグは、対立候補に倍以上の差をつけて圧勝し、今日に至るというわけです。
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