これが「政権とカルト教団の癒着」の実態だ。安倍氏と統一教会“密談”写真スクープでも再調査を拒む岸田首相と自民総裁選の候補者たち

 

本家トランプほど愚か者ではなかったドゥテルテ

こうした流れから、ボンボン・マルコス大統領をトップに担ぐマルコス派と、ロドリゴ・ドゥテルテ前大統領&アポロ・キボロイ一派の間に大きな亀裂が入ってしまいました。ここで誰よりも困ったのが、ドゥテルテ前大統領の娘であり、アポロ・キボロイからも支援されていながら、ボンボン・マルコスの片腕として副大統領をつとめていたサラ・ドゥテルテです。しかし、サスガに父親に反旗を翻してマルコス派に就くことはできず、必然的に「大統領派 VS 副大統領派」という抗争へと発展してしまったのです。

そして、常に自分のカネ儲けと保身しか考えていないアポロ・キボロイは、年が明けた今年2024年2月21日、「アメリカ政府はボンボン・マルコス大統領やマーティン・ロムアルデス議長と共謀して、私の暗殺計画を進めている!今こそ邪悪なマルコス政権を倒さなければならない!」というメッセージ動画を作成し、信者らに拡散したのです。

このアポロ・キボロイ率いるカルト教団のテレビ局「SMNI」は、公共放送でありながら議会の承認を得ずに勝手に所有権を移転するなど、以前から違法なことをやり続けて来ました。それが許されたのは、アポロ・キボロイを盟友と呼ぶロドリゴ・ドゥテルテが大統領だったからです。しかし、今は違います。いくらドゥテルテ前大統領の娘のサラ・ドゥテルテが副大統領に就任したとは言え、トップの大統領は下院を牛耳るマルコス派のボンボン・マルコスなのです。

そんな中、教祖キボロイから「打倒!マルコス政権!」のメッセージを受け取ったカルト教団「イエス・キリストの王国」の信者らは、3月12日、マニラ市の中心部の公園で数千人規模の集会を開催しました。もちろん、ドゥテルテ前大統領や現職の副大統領であるサラ・ドゥテルテだけでなく、ドゥテルテ派の上院議員らも数多く参加しました。

信者らは「打倒ボンボン・マルコス!打倒マーティン・ロムアルデス!」と盛り上がり、過激な様相を呈して来ました。すると、ここでドゥテルテ前大統領が、数千人の参加者に向かって、思わぬ言葉を発したのです。

「ボンボン・マルコス大統領は、我々が求める改憲に熱心な大統領だ!今日のデモはこの場にとどめ、マラカニアン宮殿に行くのはやめよう!国民の大切な財産を傷つけてはならない!」

ボンボン・マルコスの父、フェルディナンド・マルコス大統領の20年に渡る独裁政権に終止符が打たれたのは、1986年2月の「エドゥサ革命」です。群衆は大統領官邸であるマラカニアン宮殿に押し寄せ、マルコス大統領夫妻は米軍基地へ逃げ込み、米軍の協力でハワイへ亡命しました。ドゥテルテ前大統領は、キボロイに煽られた信者らが「エドゥサ革命」の時のように、マラカニアン宮殿に押し寄せることを危惧したのです。「フィリピンのトランプ」は「アメリカのトランプ」ほど愚か者ではなかったのです。

しかし、マルコス派も黙ってはいません。ドゥテルテ前大統領から濡れ衣を着せられて侮辱されたマーティン・ロムアルデス議長は、3月20日、アポロ・キボロイがトンデモ動画で信者らを扇動したことへの報復として、自分に対する「公金の不正流用」というデマの流布、ドゥテルテ前大統領の「私はお前ら共産主義者を皆殺しにしたい!」という暴言、そして、議会の承認を得ない所有権移転などを理由に、テレビ局「SMNI」の免許取り消しを賛成多数で可決し、上院へ送ったのです。当然、上院でも可決されました。

この記事の著者・きっこさんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • これが「政権とカルト教団の癒着」の実態だ。安倍氏と統一教会“密談”写真スクープでも再調査を拒む岸田首相と自民総裁選の候補者たち
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け