石破“新総理”はどう動く?意図的に忘れられるウクライナ、透けて見える「できるだけロシアを刺激しない」という各国の意図

 

アメリカ政府が抱き始めた「疑念」と「危機感」

そのガス抜きのためでしょうか。それともイスラエル非難で再度結集したのでしょうか?

パレスチナ自治政府が提案者となり、中東各国が支援する形で、イスラエルによるパレスチナ占領の即時停止とユダヤ人入植地の返還を求める決議案が国連総会に提出されました(そして9月18日、総会で採決にかけられ、124か国の賛成、14か国の反対、43か国の棄権で採択されました)。

もちろんイスラエルは「テロだ」と激しく反応するのですが、そちらに目を向けさせることで一旦挑発行為から力を削ぎ、外交フロントでの戦いに専念させるという狙いと、「もう中東諸国もイスラエルによる横暴を放置しない」というunited frontを組織してイスラエルと対峙することを選んだという狙いも見えてきます。

そのどちらの性格が強いかは、中東諸国の間でも違いがありますが、共通しているのは【エスカレーション傾向にあるイスラエルの挑発行為と政府の右傾化による周辺諸国との対峙姿勢の鮮明化に対する反感と懸念の強まり】です。

同様の懸念は、孤立してもイスラエルを支え続けてきたアメリカの姿勢にも反映されているように見えます。

様々な舞台でイスラエルへの非難が強まる中、これまでのようにあからさまな支持は行わず、アメリカ政府もイスラエルと距離を取る姿勢が目立つようになってきています。

「もう支えきれない」という思いもあるでしょうが、一番は「中東地域の争いに再度アメリカが引きずりこまれてはいけない」というラインだと思われます。

イスラエルを庇い続けざるを得ないアメリカの政治事情を十分に知り尽くしたうえで、ネタニエフ首相と極右の仲間たちは周辺国への威嚇を強め、戦争を長引かせることで、アメリカを中東地域に引き戻す意図があるのではないかと、アメリカ政府も疑念と危機感を抱き始めているようです。

そして幸か不幸か、今、大統領選の最中であり、あまり国際フロントで目立った行動を取って、有権者を刺激したくないという政治的な意図も見え隠れします。

ゆえに今、国際情勢の解決において、アメリカはあまり派手に動くことは出来ず、遠く離れたどこかの戦争にまた引きずり込まれることに大きな抵抗をしていると言えます。

それはイスラエル・ガザのみならず、ウクライナ問題に対しても同じです。

バイデン大統領の任期があとわずかになる中、何らかのレガシーづくりに勤しむ可能性は否定できませんが、アメリカ政府としては中長期的な戦略的に、プーチン大統領とロシアを当該エリアに留め続けたいと願っており、欧州地域やアジア地域で高まる懸念に可能な限り関わらせたくないという姿勢があるため、水面下で何らかの協議は行われているはずですが、表立ってロシア・ウクライナ案件に触れようとはしていないように見えます。ゆえに今回、ニューヨークでアメリカの政府関係者と協議しても、異様なほどウクライナについての話題が盛り上がりません。

イスラエルの行動がすでに制御不能となり、ガザにおける人道状況は、56万人がすでにポリオワクチン接種済みという明るいニュースもある半面、イスラエル軍による攻撃の再激化を受けて悪化の一途を辿っており、イスラエルがどんどん孤立に際して意固地になっているのが鮮明化していますし、ウクライナの案件も終わりが見えない状況です。さらには人道的な地獄と化しているスーダン内戦も迅速な対応が必要です。

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