「評言独語」──きわめて危ない石破政権。「空想的軍事オタク」路線の行き着く先
自民党総裁選で高市早苗候補が勝てば、推薦議員20人のうち13人が裏金議員だったこと、応援団が安倍晋三シンパであることから「安倍亜流路線」が続いた。高市政権誕生にならなかったことは日本にとってよかった。
だが石破茂政権もきわめて危ない。アメリカ保守系シンクタンクのハドソン研究所に寄せた「日本の外交政策の将来」(9月27日)は、戦後日本の構造をくつがえす内容だ。軍事は国家権力の核心である。石破茂「軍事オタク」政権は、安倍政権以上に軍事拡大路線であることを論文は示している。その骨格を検証する。
石破構想は大きく4項目から構成されている。まずは(1)アジア版NATO(北大西洋条約機構)の創設だ。NATOの役割は、集団防衛、危機管理、協調的安全保障で、加盟国の領土と国民を守ることを目的としている。1949年に12か国で創設され、現在は32か国が加盟している。集団防衛(第5条)により、加盟国に攻撃があれば、全加盟国への攻撃とみなして、国連憲章に定める個別的あるいは集団的自衛権を行使して、攻撃を受けた締約国を援助する。
日本政府は国連憲章51条の「集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上は当然」としつつ、憲法9条のもとで許される自衛権の行使は「我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきもので、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されない」としてきた。安倍晋三議員が2004年1月26日に衆議院予算委員会で質問したとき、秋山内閣法制局長官はこう答弁している。
「集団的自衛権と申しますのは、先ほど述べましたように、我が国に対する武力攻撃が発生していないにもかかわらず外国のために実力を行使するものでありまして、ただいま申し上げました自衛権行使の第一要件、すなわち、我が国に対する武力攻撃が発生していないものでございます。したがいまして、従来、集団的自衛権について、自衛のための必要最小限度の範囲を超えるものという説明をしている局面がございますが、それはこの第一要件を満たしていないという趣旨で申し上げている」
日本に対する武力行使を排除する自衛権の行使は合憲であり、そうではない自衛権の行使は違憲だというのが政府の立場だった。安倍晋三政権が閣議決定で集団的自衛権の限定的行使を容認したが、それは「解釈改憲」であって合憲ではなく違憲である。
石破茂総理もそれは理解しているのだろう。シンクタンクへの論文では、「安保3文書」や防衛予算の国内総生産(GDP)比2%への増加は、閣議決定や個別の法律にすぎないから危機対応のためには「国家安全保障基本法」の制定が必要で、それに続けて「自民党の悲願である憲法改正を行う」としている。憲法を変えなければ集団的自衛権の行使はできないからだ。