アジア版NATO以外でも空想的な世界を広げていく石破構想
もっとも石破茂構想は、論文が公表されてから内外で批判が起きている。アジア版NATOの具体的なパートナーは、アメリカ、カナダ、オーストラリア、フィリピン、インド、フランス、イギリス、韓国だという。石破論文は日米同盟を中核にして「将来的にアジア版NATOに発展させることが可能だ」とする。だが、すでに述べたように相互防衛の仕組みだから、(1)日本の自衛権の定義では加われない、(2)交戦権を認めない憲法9条との整合性もない。外務省幹部が「構想は現実的でない。相手国のために戦って自国民が犠牲になる恐れがあるという覚悟を持たないといけない。東南アジアは乗ってこない」(『日本経済新聞』9月30日付け)とコメントしたのが真っ当な見解だ。
インドのジャイシャンカル外相は、10月1日にワシントンのカーネギー国際平和財団で開かれたイベントで、日本と異なりインドは他国と条約による同盟関係を結んだことがないとし、石破構想について「われわれはそのような戦略的な枠組みは考えていない」「われわれには異なる歴史があり、異なるアプローチの方法がある」と語った(ロイター、10月1日)。
アメリカのNSC(国家安全保障会議)関係者も「混乱を招く」としてきたが、ランド研究所のジェフリー・ホーナン国家安全保障研究部日本部長は明確に否定コメントを語った。「非現実的だ。NATOが歴史的に機能したのは加盟国が(ソ連・ロシア)脅威に共通認識を持っていたからで、現在のインド太平洋地域にはそれがない」。現実性のない石破構想は、したがってアジア版NATO以外でも空想的な世界を広げていく。
アジア版NATO構想では「核共有」についてこう書いているーーー(本記事は有料メルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』2024年10月4日号の一部抜粋です。続きをお読みになりたい方は、初月無料の定期購読にご登録の上お楽しみください。このほか、1ヶ月単位でバックナンバーもご購入いただけます)
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