ラスベガスのちょっと残念な現実が示す、日本インバウンドの新たな課題

Las,Vegas,,Nevada,,Usa,-,November,7th,,2023:,Msg,Sphere
 

華やかなエンターテインメントの街、ラスベガス。その一方で、観光客のモラル低下がもたらす「残念な現実」がこの街の魅力に影を落とし始めています。Google、マッキンゼー、リクルート、楽天の執行役員などを経て、現在はIT批評家として活躍されているメルマガ『尾原のアフターデジタル時代の成長論』の著者・尾原和啓さんは、ラスベガスの現状をもとに日本のインバウンド観光における新たな課題やモラルハザード、そして今後の対策について考察します。

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:ラスベガスに日本インバウンド観光の先をみる

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ラスベガスのちょっと残念ところ

僕は、朝の抜ける空と狂ったようにいろんな建物が立っていく砂漠のど真ん中で娯楽の水を集めたラスベガスという街がとても好きなんですが、一方で毎年ラスベガス来て「ちょっともったいないなぁ、悲しいなぁ」と思うことがあるんですよね。

それがモラルハザードです。例えば、ホテル。ホテルの部屋に入るとコップもない、湯沸かし機もない、というような状態になっています。今回に至っては歯磨きをするためのコップすらなくなっているんですよね。

これって結局、ラスベガスもう本当にいろんな国の方々が集まるということで、要は持って帰っちゃうんですよね(笑)。だからもう最低限、必要な服を置くためのハンガー、タオルだけでそれ以外のものはほとんどなくなるというふうな感じでした。

ラスベガスは、みんながパーッという気持ちで集まってくるのですが、逆にいろんなものを持って帰ってしまう。つい最近で言えば、湯沸かし機とかも中で、インスタントラーメンを作っちゃったりとかして、それによってポットが匂いで使いにくくなっちゃったりとかするということもありました。

せっかく遊びに来ている人たちも多い中で、もう部屋がものすごい使いにくいみたいなことが起きちゃっているのはすごいもったいないと思うんですよね。

一回しか来ないと思う人が多くなるとサービスレベルが落ちる

結局、世界中から集まってくる街になってくると「もうどうせ1回しか来ない」という前提の中で動く人も出てきちゃうんですよね。すると、もう1回しか来ない場所だから全部持って帰っちゃっていいよねとか、ないしはもう1回しか来ない場所だから次の人が使うときにどんな気持ちになるかはあまり想像が及ばなく、部屋を汚い使い方してしまう。

まあそういう人というのはデポジットとか色々なクレジットカードチャージがあるんですけど、いうてしまえばそういうものを止めてしまえば払わずに済むみたいなやり方いっぱいあったりする。どんどんもうモラルなんて気にしないよという過激な方向に行くとそういう方が泊まってしまうという前提で部屋の環境がどんどん悪くなっちゃういうことなんですよね。

さらにここ5年ほど拍車がかかっているのはカジノリゾート税というもの。基本的にはラスベガスってホテル代がめちゃくちゃ安いんですよ。ホテルで泊まったらホテルのレストランでご飯を食べれるし、何よりもカジノでお金を落としてくれる。
だったらどんどん安くてむしろうちの泊まった止まホテルのカジノでいっぱい遊んでってくれよということでホテル代が安かった。

最近、ラスベガス自体が家族がいっぱい来る街みたいなふうになってきたのでナイトショーとかシルクドソレイユとか豪華。するとカジノでほとんどお金を使わない方もたくさんが出てきちゃうわけですよ。

そこでビジネスとしてみると、そこで稼ぐからホテル代を安くしているのが採算が合わないということで、ホテル代とは別に家事のリゾートフィーというものを取るようになるわけです。これはこれでまた面倒くさいところがあります。

というのも、普段のホテルサイトとかではカジノリゾートフィーがいくらかかるかというのが見えないんですよ。そうすると旅行サイトで見るとホテル代は安いから泊まろうかという感じで泊まっても、結局後で見てみるとリゾートフィーを払ったら結構高いじゃんという話になっちゃうんですよね。

これ逆に言うと、泊まる場合はどうせ1回しか泊まらないんだからという形でいろいろやってくるのであれば、もうホテル側もどうせ1回しか泊まらないお客様だったらそういう形で見えない部分料金を取ってやろうという、負のサイクルに入っちゃうんですよね。

これってラスベガスとしての場所の魅力をなくしていくことになるので、もったいないなって話です。

でも逆にリゾート地からしてみれば、長く使ってくださって気持ちよく遊んでくださる方に来てくださればいいという話があります。世界中「オーバーツーリズム」と言って、もう観光客が来すぎてキャパシティー超え、それで本当に長年使ってくださる方が居心地が悪くないということもあったりする。

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「わかっている人」だけに特別待遇する時代

そこで今度はプロトコルって話になります。要はわかっている人はわかっている人にだけ特別待遇をするよということがくっついてくるんです。だからホテル側もホテルの会員権みたいなことをどんどん充実させ、それによって常連のお客様にはしっかりサポートしていくよということになります。

あとラスベガスのバーとかレストランとかもどんどん紹介制が増えてきています。ある種、紹介された人があまりいい振る舞いをしないと結局紹介した人も来れなくなっちゃうんですよね。

すると人の顔を汚すわけにいかないからと言って、みんな礼儀正しい振る舞いをする。こういうふうにお互いが暗黙な約束があって、暗黙な約束がわかっている人だけが入れる場所があるよというのがプロトコルという考え方だったりするんですね。

そういうふうにモラルハザードを前提としながら「本当のお客さん」、つまりプロトコルをわかっている人だけが入れる空間にしていくというのはわからんでもない。でも、うまい塩梅はないかな? というふうに思うわけです。

ちょっと今日はまだ解決策が見えているわけじゃないんですけど、どういう方向性になっているかというのを解説しました。

京都とかは本当にたくさんの人が来すぎて市民のほうがバスに乗るれないみたいな形で、オーバーツーリズムの弊害が出ていいます。また、1回しか来ない人ということによってどんどんモラルハザードは崩れていくと、せっかくの観光の街並みみたいなものも壊れていくみたいなこともあったりします。なので今後どうなっていくのかなという話をまずは問題提起としてお話ししました。というわけでつながる未来を頼りましょうね。じゃあね~。

 

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image by: Suzyanne16 / Shutterstock.com

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IT批評家、藤原投資顧問 書生 1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用システム専攻人工知能論講座修了。 マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタート。 NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援を経て、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab取締役)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、Google、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業立ち上げに従事。 経産省 対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザー等を歴任。 現職は14職目。シンガポール・バリ島をベースに人・事業を紡ぐカタリスト。ボランティアで「TEDカンファレンス」の日本オーディション、「Burning Japan」に従事するなど、西海岸文化事情にも詳しい。

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【著者】 尾原和啓 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 月・木曜日 発行予定

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