ノーベル物理学賞のジェフリー・ヒントン博士が警鐘「数年後、私たちはAIに負ける」

 

上記の記事でも紹介した通り、ヒントンは「自分のライフワークを後悔する気持ちさえある」とまで述べており、AIの脅威について積極的に警鐘を鳴らしていますが、自らが育てたともいえるAIを決して全否定しているわけではないようです。

同氏は、グーグルを去ってから、AI開発を継続すべきかどうかについての自身の見解が誤解されているように感じていたとのことで、「多くの記事は、私が直ちにAIの開発を止めるべきだと考えているように書いていますが、そのようなことは一度も言っていません。そもそも、そんなことは不可能だと思いますし、開発は続けるべきだと思います。なぜならAIにはさまざまな素晴らしい可能性があるからです。ただし、それと同じくらいの労力が、AIがもたらす悪影響を抑える、あるいは防ぐため注がれるべきだと考えています」と述べています。

ヒントンは、OpenAIのサム・アルトマンCEOのことをあまりよく思っていないようで、彼はAIの安全性よりも利益を優先していると述べており、自分の門下生であるイリヤ・サツキーバーがアルトマンを解任したことを誇りに思うと発言しています(昨年11月、OpenAIで内紛があり、アルトマンが突如解任され、その後すぐに復帰して、アルトマン解任を主導したサツキーバーはその後OpenAIを辞めています)。]

ヒントンは、ノーベル賞受賞確定後に、カナダの公共放送であるCBCのインタビューに応じて、今回の受賞が問題意識の共有につながることを期待したいとした上で、次のように語っています。

「おそらく今後20年以内に、私たちは自分たちよりも『知的なもの』を開発することになるでしょう。そのような状況に、私たちは到達したことがありません。それがどうなるのか、まったくわかりません」

そして、改めて以下のように警鐘を鳴らしました。

「AIが人から制御権を奪うことがないように、私たちはいま懸命に取り組むべきです。なぜなら、私たちが大切にしているのは『人』であるからです。だから優秀な若い研究者たちは、その研究課題に多くの努力を注ぐべきです。解決策があるかどうかはわかりませんが、あるとすればかなり急いで見つける必要があります」

人類は、このジェフリー・ヒントンの警鐘を重く受け止める必要があるでしょう。

この記事の著者・辻野晃一郎さんのメルマガ

登録はコチラ

image by: Shutterstock.com

辻野晃一郎この著者の記事一覧

辻野 晃一郎(つじの・こういちろう):福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。

有料メルマガ好評配信中

  メルマガを購読してみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中 』

【著者】 辻野晃一郎 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 金曜日 発行

print
いま読まれてます

  • ノーベル物理学賞のジェフリー・ヒントン博士が警鐘「数年後、私たちはAIに負ける」
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け