上記の記事でも紹介した通り、ヒントンは「自分のライフワークを後悔する気持ちさえある」とまで述べており、AIの脅威について積極的に警鐘を鳴らしていますが、自らが育てたともいえるAIを決して全否定しているわけではないようです。
同氏は、グーグルを去ってから、AI開発を継続すべきかどうかについての自身の見解が誤解されているように感じていたとのことで、「多くの記事は、私が直ちにAIの開発を止めるべきだと考えているように書いていますが、そのようなことは一度も言っていません。そもそも、そんなことは不可能だと思いますし、開発は続けるべきだと思います。なぜならAIにはさまざまな素晴らしい可能性があるからです。ただし、それと同じくらいの労力が、AIがもたらす悪影響を抑える、あるいは防ぐため注がれるべきだと考えています」と述べています。
ヒントンは、OpenAIのサム・アルトマンCEOのことをあまりよく思っていないようで、彼はAIの安全性よりも利益を優先していると述べており、自分の門下生であるイリヤ・サツキーバーがアルトマンを解任したことを誇りに思うと発言しています(昨年11月、OpenAIで内紛があり、アルトマンが突如解任され、その後すぐに復帰して、アルトマン解任を主導したサツキーバーはその後OpenAIを辞めています)。]
Geoffrey Hinton says he is particularly proud that one of his students fired Sam Altman because Sam is much less concerned with AI safety than with profits pic.twitter.com/HFmQVi6NXW
— Tsarathustra (@tsarnick) October 9, 2024
ヒントンは、ノーベル賞受賞確定後に、カナダの公共放送であるCBCのインタビューに応じて、今回の受賞が問題意識の共有につながることを期待したいとした上で、次のように語っています。
「おそらく今後20年以内に、私たちは自分たちよりも『知的なもの』を開発することになるでしょう。そのような状況に、私たちは到達したことがありません。それがどうなるのか、まったくわかりません」
そして、改めて以下のように警鐘を鳴らしました。
「AIが人から制御権を奪うことがないように、私たちはいま懸命に取り組むべきです。なぜなら、私たちが大切にしているのは『人』であるからです。だから優秀な若い研究者たちは、その研究課題に多くの努力を注ぐべきです。解決策があるかどうかはわかりませんが、あるとすればかなり急いで見つける必要があります」
人類は、このジェフリー・ヒントンの警鐘を重く受け止める必要があるでしょう。
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