汚物風船への反撃か、それとも自作自演か?平壌に舞った「風船ビラ」の中身

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韓国に向けて北朝鮮から飛ばされた汚物風船が話題となりましたが、今度は北朝鮮上空に風船ビラが撒かれたようです。今回のメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』では、宮塚コリア研究所代表の宮塚利雄さんが、その詳細についての調査結果を紹介しています。

平壌上空に舞った風船ビラは北朝鮮の自作自演か

19日朝の朝鮮中央テレビや労働新聞は、10月13日に韓国から北朝鮮に侵入した無人機の残骸が平壌で見つかったと写真付きで報じた。北朝鮮の報道官は韓国軍が装備しているものと同じ型の機体だと主張していて、この無人機がビラを撒く際に使用された可能性が高いと主張している。そして北朝鮮は「韓国側の侵略行為が再び確認されればすぐに報復を行う」と警告もした。

私はこの2~3年は朝鮮半島上空を乱舞する風船ビラの内容と、風船そのものについても調べてきた。最近では風船ビラは韓国側から飛ばしたものも、北朝鮮側か飛ばしたいわゆる“汚物風船”も10個飛ばせば10個とも相手側に到達するのではなく、その成功率は良くても6~8割程度くらいと言われている(時には日本にも飛んでくるが)。

しかもその飛行距離は韓国側から飛ばしたものは、非武装地帯から北朝鮮側の10~30kmを超えるくらいなもので、たまに平壌まで飛んで行くものもあるが稀であると指摘されてきた。したがって「無人機によって平壌の中枢部の中区域の上空に風船ビラが撒かれた」と言う報道には驚いた。

韓国のある脱北者団体が、ビラの撒布地域や頻度を遠隔操作ができる「スマート風船」なるものを開発中であるが、このスマート風船1個を作るのに700ドル以上もかかるので、民間団体の資金力では限界があると聞いていたばかりなので、一体誰が、ドローンならぬ無人機を飛ばしてビラを散布したというのか。

一般に市販されているドローンの飛行距離は長くても10~20キロメートル程度と言われており、軍用ならば100kmを超えるものもあるとのことだが、非武装地帯から平壌までは直線距離で160kmと言われており、ドローンで風船ビラを飛ばすことは不可能である。

一方、無人機ならどうだろうか。今回、北朝鮮が「平壌市内の朝鮮労働党中央委員会庁舎上空化で撮影した」として公開された写真では、翼が胴体に固定された「固定翼」形態の無人機と見られる物体が識別できる。しかし、これは誰でも入手できる中国製の民間回転翼(プロペラ式)ドローンとは違い、民間人には簡単には手に入らない無人機だという。

この無人機が最前線から平壌を経て韓国側に戻った場合は往復300kmを飛ぶことになり、韓国軍の軍団級無人機RQ101「ソンゴルメ(ハヤブサ)」の航空距離が200kmと言われており、不可能に近い。このため一部には「海外の反北朝鮮団体が公海上から飛ばした可能性」が考えられると言い、「北朝鮮内部の団体の犯行」や「北朝鮮当局による自作自演」もあり得るとの説もある。

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