「別室授業」を拒む校長の鼻先に突きつけたい。価値なき文科省「いじめ白書」の“有効な使い方”

 

認知数トップ山形県と最小の長崎県とのこれだけの差

また、文科省が最も気にしていると言われているのが、都道府県別1,000人当たりのいじめ認知数である。理由は平成30年に異例の総務省からの数値デタラメでしょという勧告をされたことがあるからだ。

しかし、今回も1,000人当たりのいじめ認知数はトップが山形で117.7件、最少は長崎県で17.9件であり、その差はおよそ6.5倍もあったのだ。勧告があった平成30年は、その差は「19.4倍」であったから、相当に縮まってきたが、それでもこの差の大きさは、各都道府県自体のいじめを認知する力、正確な報告をしていく姿勢などの差を示すものとなろう。

文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸問題に関する調査」より抜粋

文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸問題に関する調査」より抜粋

また、不登校の原因についても掲載されているが、不登校支援の現場にいる職員らが感じる原因と文科省統計には大きな差異がある。

文科省統計概要では、

不登校生徒について把握した事実としては、高等学校においては、「学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった。」(32.8%)が最も多く、続いて「生活リズムの不調に関する相談があった。」(26.7%)、「不安・抑うつの相談があった。」(16.7%)、「学業の不振や頻繁な宿題の未提出が見られた。」(15.4%)、「いじめ被害を除く友人関係をめぐる問題の情報や相談があった。」(11.0%)の順で多かった。

とあるが、NHKとLINEが共同で、不登校児童生徒やその傾向がある児童生徒に直接アンケートを取ったところ、「いじめが原因」と回答した子どもは21%にも及び、およそ1%程度の数値となっている文科省統計とはその結果におよそ20倍もの差があったのだ。

つまり、文科省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸問題に関する調査」、いわゆる「いじめ白書」は、数値的な問題点やバイアスの掛かった分析がされているため、あくまで正確な数値として認識するのではなく、目安・参考程度で考える必要があるから、一喜一憂するようなものではない。

また一方で、民間企業のように調査結果の数値の誤りなどが致命傷になって倒産や危機的状況になるようなこともないから、あまり真に受けたり、研究の基にする価値はないと判断すべきなのだ。

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