学校との交渉で有効に使える「いじめ白書」の項目
なんだ、国の発表なのに、この程度で信ぴょう性は低いのか…と悲観する必要はない。そもそもで、この統計は集計方法やその構成上の問題であるから、国すらもいじめ対策に不作為をきめこもうとしているわけではないのだ。
事実、この統計には、学校のいじめ対策交渉で有効に使える項目がいくつもある。私はここに、児童生徒課若手官僚の底力を見た思いだ。
例えば、多くのいじめ事件で、被害者は加害者のいじめ行為によって、同じ空間に居合わせること自体が苦痛、耐えられないという状況になる。これが酷くなって身体のコントロールができなくなったり、過呼吸を起こしたりする「適応障害」と診断されたり、さらに酷くなって「PTSD」を発症するケースが後を絶たない。
しかし、学校はなぜか有効な対処をせず、加害者と被害者を同じ空間に押し込んでしまったり、耐えられない被害者を異常とみなしたり、被害側を不利な立場に追い込むなどする。
そして、被害側やスクールロイヤーなどが加害側の別室授業などを提案すると、被害者にも保護されるべき人権があるのに、加害者の人権ばかりを唱え、あたかも被害側の要求が過度で人権侵害であるのだと追及をするなどする。
しかし、今回のいじめ白書には、別室授業をどの程度行ったかの統計がついている。公立校では6,131件、私学では988件の別室授業が行われたとあるから、加害者の別室授業は令和6年においては(統計は令和5年度中だが)この対処は当たり前の対処となるのだ。
仮に、別室授業を拒む校長がいれば、統計を見せてあげるといい、たいていこういう校長らは加害者の別室授業対応を拒む際に、「長年、教壇に立ち、教育界にいるが、そんな対処は聞いたことも見たこともない、そういうことをやっている学校があれば教えてもらいたいものだ」と怒鳴るが、今や当たり前すぎる対処ですと言い返せるだろう。
さらに、公立校で中学校以降となるが、自宅謹慎は797件、保護者への報告は42万4,449件もある。加害親に報告しなかったりする方が異常とも言えるし、あまりに酷い場合は、公立校でも自宅謹慎で対応することもあるということだ。

文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸問題に関する調査」より抜粋
ただし、私はまだまだ甘いと考えている。もしも、犯罪行為の被害に遭っているならば、何らの躊躇もする事もなく、警察で被害届を出すべきだし、治療費や損害があり、加害側が請求に応じないならば、容赦なく司法に訴えでるべきだ。そんな大げさなという人もいるが、これは加害行為をした者への再発防止策ともなり得るし、いじめ法改正がない今、最大限できることが警察での対応を求めることと、民事訴訟を起こすことである。
被害者の方々やいじめに関心のある方々には、ぜひとも様々な視点で、今回の統計を読み解いてもらえればと思う。上のように、交渉に使える材料はまだまだたくさんある。
諦めないで、できることを1つ1つ積み重ねていきましょう。
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