マイナ保険証の“本格利用”開始が炙り出した「国は大きなものしか見えていない」という悲しい現実

 

私のかかりつけの歯医者さんによると、システム導入やデジタル化に伴い、パソコンなどすべての機器を買い替える場合もあるとのこと。また、メンテナンス費用も高く、「金がかかって仕方がない。負担感は半端ない」と言っていました。廃業を余儀なくされたクリニックの多くは、地域に長年尽くしてきた高齢の医者さんたちです。その中には、後継者問題を抱えながらも、「患者さんたちを見捨てられない」とふんばっている医師がたくさんいます。

最新の統計ではクリニックや診療所で働く医師の平均年齢は60.4歳。60~69歳が全体の29.7%、70歳以上が全体の23.0%と、ベテラン医師が半数以上を占めています。

年を取るとかかりつけの医師を変えるのは大変です。

高齢の医師たちのがんばりに、「自分もがんばろう!」と励まされる患者もたくさんいます。

デジタル化は時代の流れですし、利用者にとってプラス面が多いことはわかります。しかし、大きなものしか生き残れない社会になっていないか? 国は小さなもの、弱きものを、しっかりと支えられているのか?

私には忘れられない“悲鳴“があります。東日本大震災のあと、石巻の渡波地域に通っていたときのこと。震災前にご夫婦で中華料理店を営んでいた70代の男性がこう嘆いていました。

「店をもう一度やろうって気持ちになったのに、補助金がおりない。後継者のいない個人商店にはカネがでないんだよ。津波で生き残っても国に殺さるんだ」ー。

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