中島聡が注目する人工知能バブルの最大論点。「AIネイティブ」なソフトウェアがオールドビジネスにもたらす破壊的イノベーションとは?

 

AI-Nativeの実例(2)Podcast配信アプリ

私が同じくオープンソースで進めている「AI-Podcaster」もAI-Nativeなソフトウェアの分かりやすい例です。

従来型のPodcastは、自分で台本を書き、自分で読む・話すことが前提で作られていますが、「人間の言葉を理解するAI」を前提に設計すれば、AIに台本を読んでもらうだけでなく、台本をすらAIに書いてもらうことが可能です。

発信者はプロデューサーとして、話すべきトピックを決めるだけです(それすら、AIに任せることが可能ですが、そうなると人間の出番はなくなってしまいます)。AIは翻訳も得意なので、複数の言語で配信するコストも限りなくゼロに近く、世界をターゲットにしたPodcast配信が、どこにいても行えるようになります。

Podcastを聴く体験も、AI-Nativeに設計することにより、根本的に改善することが可能です。これまでのように、「聴きたいPodcasterを探してsubscribeする」という不便な形から、Tiktokのように「ダラダラと聴いているだけで、自然と自分が聴きたいコンテンツが流れるようになる」体験を提供することが可能になります。

それ以外にも、設計段階から「人間の言葉が分かるAI」があることを前提に作ると、今までとは大きく違うものになるソフトウェアやサービスがたくさんあります。

「制作コストがゼロになる時代」を想像せよ

注目すべきなのは、上の両方のケースに登場する「(辞書の項目や音声コンテンツの)制作コストが限りなくゼロに近くなる」という部分です。AIは、単に人の代わりに知識労働をしてくれるだけではなく、そのコストを限りなくゼロに近づけてくれるのです。

無尽蔵の知識労働を限りなくゼロに近いコストで素早く行ってくれるAIの誕生により、これまで不可避だった「コストや時間のために存在していた制約」が外れるのです。その外れた制約のおかげで可能になるのが、AI-Nativeなソフトウェアやビジネスなのです。

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