中島聡が注目する人工知能バブルの最大論点。「AIネイティブ」なソフトウェアがオールドビジネスにもたらす破壊的イノベーションとは?

 

セールスフォースは中長期的に市場を奪われる可能性が高い

少し前に、このメルマガでも触れましたが、CRM(Customer Relationship Manager)やERP(Enterprise Resource Planning)もAI-Nativeに根本から設計し直せば、導入も簡単になるし、コストも大幅に下げることが可能になります。

市場のリーダーであるSalesforceやSAPは、既存のソフトウェアにAIの機能を追加して来ますが、決してゼロから作り直すことはしないしできないので、中長期的には、AI-NativeなCRMやERPサービスに市場を奪われることは不可避だと私は見ています。

旧来型のエンタープライズ・ソフトウェアは、それぞれの顧客のビジネス・プロセスに応じた形にカスタマイズするコストが膨大でした。そのため、導入に数ヶ月かかることはザラだったし、ビジネス・プロセスの変化に柔軟に対応することは不可能でした。

「人間の言葉を理解するAI」「コードが書けるAI」の誕生により、必要なコードをその場で生成して実行することが可能になりました。コードの生成コストが限りなくゼロに近づけば、使い捨てのコードを必要に応じて作る柔軟なエンタープライズ・システムを作ることが可能になります。

莫大なコストと時間がかかるカスタマイゼーションは不要になり、ビジネスの変化にも、素早く柔軟に対応できるようになります。導入に数ヶ月かかるようなソフトウェアは、AIの誕生により「時代遅れな存在」になってしまったのです。

私は、1970年代からこの業界で仕事をしていますが、これほどまで大きな変化は3回しか体験していません。

  • 1970年代後半:マイクロプロセッサ・パソコンの誕生
  • 1990年代後半:インターネットの誕生
  • 2020年代前半:自然言語を理解するAIの誕生

2000年代後半のスマホの誕生をここに加えたがる人たちがいるのは分かりますが、本当のイノベーションは携帯電話網による「常時接続インターネット」なので、ソフトウェア・アーキテクチャの面から言えば、1990年後半からスタートしたインターネットがもたらした大変化の一環と見なすべきなのです。

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