USスチール買収阻止の空騒ぎ、日鉄がんばれ!の勘違い。バイデンも日本もなぜ「国益と無関係の話」に熱くなれるのか?

 

すでに「中国優位」になっている鉄鋼産業の特殊な性質

高炉というのは、石炭由来のコークスを燃やして鉄鉱石から鉄を製造する巨大な「溶鉱炉」のことです。この高炉に関しては、現時点では中国など20世紀末から21世紀に入ってシェアを伸ばした国が優位に立っています。

高炉というのは非常に大掛かりな製造設備です。またコストを抑制するためには連続稼働をしなくてはなりません。ですから、新規に建設するのは巨額の設備投資になります。投資を回収するのも長期になるうえ、危険な高温での連続操業をしますから、設備の周辺機器を含めて稼働しながら性能の向上や、部分的な自動化などを進めるのは難しい性格を持ちます。

どうして中国が優位なのかというと、それだけ稼働が新しいからです。新しいということは、自動化が進んでおり効率や性能もアップしています。これは品質とコストの点でそのまま優位になります。

では、中国の高炉がコストや製品の品質で優れているからといって、アメリカや日本の高炉も最新式にしたら良いのかというと、それはノーです。巨額の投資が必要で、作ったら運転し続けないといけない中では、現有の高炉をどんどん更新することは不可能だからです。

日本について言えば、アメリカより高炉を建設するのが新しかっただけでなく、前後の処理などを含めて技術力があり、技術革新を続けたことでの競争力があるわけです。

中国の場合は、日本から技術移転があったわけですが、これは製鉄の場合について言えば、ある種の必然があります。

中国の近代化に鉄は必須であるだけでなく、中国が成長するタイミング、そして高炉を増やしていったタイミングでは、仮に彼らが巨額の費用を払ってくれたにしても、日米には旧い高炉が残り、中国には新しい高炉ができているという状況は変えられないと思います。

エレクトロニクス、特に半導体の場合は「技術移転をした分だけ自分が先へ行って競合を避ける」ということはできず、日本の産業としては40年のレンジで見れば、自爆的な行動に終わり敗北を重ねた上での衰退に追い込まれました。

ですが、鉄の場合はもっと性格が異なります。高炉の償却期間の長さと、連続稼働の必要という特殊条件が重なるからです。

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