USスチール買収阻止の空騒ぎ、日鉄がんばれ!の勘違い。バイデンも日本もなぜ「国益と無関係の話」に熱くなれるのか?

 

高炉による高品質・高張力鋼板が必要とされるのは「今だけ」

例えば、中国製の安いEVの場合は、外板に強化プラスチック素材を使用しています。中には骨格部分はアルミで、外板はプラという「アイアンレス(鉄を使わない)」モデルもあるようです。

もちろん、それでは衝突時の強度は確保できないので、5G電波やレーダー&レーザーのセンサを利用したネットワークによる衝突回避など、別の安全思想を持ち込む必要があります。ですが、軽量化による省エネということでは、そんなストーリーもあるのです。

アルミということでは、フォードが有名です。巨大なトラックやSUVにアルミ素材を投入して1台あたり230キロも軽量化するなどして、巨大な車体なのにフルEVにしていたりします。これも強度面では問題があるので、骨格の方は鋼鉄製でより強化しているようです。

というわけで、まだ完全に主流になったわけではないのですが、自動車のボディについては「脱鉄鋼」というトレンドが確実にあります。そして、これはEVによる効率化と、AV(自動運転車)による安全確保という両面において、技術革新とセットになっているとも言えます。

例えばですが、ここ数年で完全に装備されるようになったAV技術の先取りとしての衝突回避メカニズムというのも、単に安全性能を向上させるだけでなく、ボディの柔軟化・軽量化と裏表の関係にあります。

多少、話が脱線しますが、鉄道車両におけるアルミの利用というのは日本が非常に熱心で、1960年代から民鉄の電車に使用されており、200系以降の新幹線電車は100%アルミ車両です。

それはともかく、“現時点では”トヨタのレクサスなど高級自動車のボディ外板には、どうしても高品質の高張力鋼板が必要です。その製造技術を持ち込んで、USSの高炉の競争力を高める、これが今回の買収劇の本筋と言えます。

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