任期わずかとなったバイデン大統領が、日本製鉄によるUSスチール買収を阻止しました。この問題は日本でも大きく報じられましたが、現地アメリカではどう報じられているのでしょうか? 今回のメルマガ『在米14年&海外販路コンサルタント・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤さんが、ニューヨークタイムズの記事を引用しながら、トランプ次期大統領の動きについても予測しています。
日本製鉄のUSスチール買収阻止は現地アメリカでどう報じられているか?
日本製鉄のUSスチール買収、バイデン大統領に止められました。
国家安全保障上の問題あるというのです。
これは現地ではどのように報道されているのでしょうか?
ニューヨークタイムズ1月9日の記事をみてみましょう。
記事抜粋
日本製鉄のUSスチール買収はバイデン大統領が国家安全保障上の理由から阻止した。
ドナルド・J・トランプ次期大統領も反対を表明している。
しかしU.S.スチールは日本製鉄による買収を諦めていない。両社は連邦政府を相手取り、政治が審査プロセスを腐敗させたとして訴訟を起こしている。
「日本製鉄とU.S.スチールは、この取引がU.S.スチールの将来を確保するための最善の道であるという確信を維持しており、この目的を達成するための権利を断固として守っていく」と、U.S.スチールの広報担当は述べた。
高額な製鉄所の近代化資金の必要性に言及し、U.S.スチールは、この取引が失敗に終われば、工場を閉鎖し、従業員を解雇せざるを得ないと警告した。
U.S.スチールは、複数の製鉄所に多額の投資を行い、雇用を守る意思と能力のある唯一の買い手は日本であると主張してきた。
「この取引を阻止することは、老朽化したU.S.スチールの施設の延命のために数十億ドルの投資を否定し、高給で家族を養える組合員の職を数千件も危険にさらすことを意味する」と、両社は先週発表した。
解説
ニューヨークタイムズは、USスチールは日本製鉄に買収にされた方よいという論調です。
引き続き記事をみましょう。
記事抜粋
U.S.スチールの従業員11,000人を代表する強力な労働組
合である全米鉄鋼労働組合は、日本企業との合併に強く反対してい る。 同労組は、日本企業が組合との取引において違法な取引慣行と不誠
実な対応を行っていると非難している。 同労組は以前にU.S.スチールへの買収を提案したが、日本製鉄
との入札合戦に敗れた米国企業、クリーブランド・クリフス社との 合併を働きかけていた。 同労組は、日本企業とは異なり、労働組合が組織されている。
月曜日、U.S. スチールと日本製鉄は、クリーブランド・クリフ社を提訴し、同社
が鉄鋼労働組合の代表と共謀して取引を妨害したと非難した。
解説
全米鉄鋼労働組合はアメリカ合衆国において鉄鋼他に従事する労働者による労働組合、ロビー活動団体です。本部はピッツバーグです。
まさにUSスチールが組合母体とってよいでしょう。
日本企業の労働組合の力が弱い事は周知の事実です。
全米鉄鋼労働組合としては、自分たちの影響力が減る結果になる日本製鉄のUSスチール買収を阻止したかったのでしょう。
それで政治家にも圧力をかけているのでしょう。
バイデン大統領はこの買収阻止を国家安全保障上の問題としています。
日本人としては「同盟国である日本を信用できないのか?」と思うかもしれません。
しかし、これは米国の国内政治の問題ととらえる方がよいです。
トランプ次期大統領がこの買収を認めるならば、それは全米鉄鋼労働組合の力を削ぎたいと思った時でしょう。
日本製鉄は米国の政治状況に翻弄されている脇役なのです。
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(『在米14年&海外販路コンサルタント・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』2025年1月12日号より。この続きをお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録ください)
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