外務省のウェブサイトから削除された石破首相の発言
元自民党政調会長の萩生田光一氏は数日前、岩屋氏が訪中した後、党内の議論手続きを経ずに、中国人観光客のビザなし措置を大幅に緩和すると発表したことについて、「これは大きな問題だ」と批判したことを紹介。
中国人向けビザ要件の緩和は、2024年12月25日、北京で開かれた「ハイレベル人的・文化交流対話」で岩屋氏が表明したものです。富裕層を念頭に10年間有効な観光ビザを新設するほか、観光で複数回使える数次ビザをとれば3年間自由に渡航できるようにするというもの。
● 中国向けビザ発給緩和、日中交流の拡大狙う 歩み寄りにじむ外相会談
しかもこうしたビザ要件緩和は、自民党内での議論手続きを経ずに、岩屋氏の独断で決定されたということで、自民党の萩生田元政務調査会長は1月10日、動画配信サイトの番組「櫻LIVE」で「ビザの拡大は大きな問題だ。党の外交部会などに全くかけず、約束をしてきてしまったのは問題で、政府のやり方は少し乱暴だ」と批判していました。
加えて萩生田氏は、「外交の基軸は日米だ。アメリカの外交政策が見えない時に、慌てて中国や無政府状態に近い韓国にわざわざ行く時間があれば、外務大臣は東南アジアに行ったほうがいい」と述べ、外交姿勢に苦言を呈していました。
筑波大学名誉教授の遠藤誉氏によれば、石破首相は昨年10月10日、ラオスのビエンチャンで李強首相と会談しましたが、その際の台湾問題に関する発言について、中国外交部の公式発表では、「石破首相は『日本は日中共同声明で定められた立場を堅持する』と明言した上で、『中国とともに(アメリカの)挑発に対応する』と述べた」とされ、そのことは、中国外交部のウェブサイトにも記されてあるとのことです。
ところが、日本の外務省の発表では、「台湾については、最近の軍事情勢を含む動向を中止している旨伝えつつ、台湾海峡の平和と安定が我が国を含む国際社会にとって極めて需要である旨改めて強調した」と書いてあるだけで、「日中共同声明で定められた立場を堅持する」も「中国とともに挑発に対応する」という文言もまったくありません。
● 日中首脳会談
遠藤誉氏によれば、石破首相が「日中共同声明で定められた立場を堅持する」「中国とともに挑発に対応する」と発言したことは、おそらく事実であろうが、それを日本の外務省のウェブサイトから削除させたのは、岩屋外務大臣ではないかと推論しています。
さらに遠藤氏は、もしかすると中国側は石破首相周辺に水面下で「もし李強首相と会談したいのなら、中国側に利する発言を会談においてすること」という要求を行い、実際にそのような発言を行わせたことを中国外交部のホームページで強調する一方、日本側は岩屋外務大臣がその事実を隠蔽し、あたかも「日本はあくまでもアメリカと台湾の側に立っている」ということを強調したのではないか、という疑念を示しています。
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