中居正広のスキャンダルとその後の記者会見によって、すっかり「社会悪」のイメージが定着してしまったフジテレビ。同社と港社長はどうなる?一方、フジテレビを傘下に持つフジ・メディア・ホールディングスの株価は、港社長の会見と前後して急騰。その理由は?人気コンサルタントの吉田繁治さんが詳しく分析します。(メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2025年1月22日号より一部抜粋、再構成)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです
「社会悪」となったフジテレビのスキャンダルはこれからが本番
フジテレビ(従業員数6000人)の組織的関与が疑われるスキャンダルが、とうとう局そのものを潰しかねないところまできました。
テレビの売上収入はスポンサーの広告費です。大手スポンサーのトヨタ、日本生命、明治安田生命、NTT、アフラック(保険)を筆頭に、1月21日までに50社以上が相次いでスポンサーを降りることを表明しました。
中居正広氏の問題よりも重いのは、あらかじめ取材を制限し、一方的に言葉を発するだけで、質問には何も答えない港浩一社長の会見です。これが、日枝-港体制のフジテレビが持つ「隠蔽体質」をあからさまに示した。約50回にのぼる回答拒否は、疑いを晴らすどころか、社長まで含む組織的なスキャンダルへの関与を示唆するものでした。
このスキャンダルを取り上げる理由は、わが国のテレビメディアに共通の問題だからです。“映像のない社長会見”のひどさに、スポンサーは即刻フジを離れました。フジの組織内部からも、隠蔽体質を露呈した会見を糾弾する声があがっています。ですが、テレビを特例的、特権的な世界と考え、何をやっても社会から許されると考えているふしがあるフジ幹部には、この問題の認識ができていないように思えます。
元SMAPのタレント、中居正広氏のスキャンダルが世間に知られる過程で、フジテレビには反社組織に共通する「社会悪」のイメージがつきました。「事件」の真相はまだ闇のなかですが、株主総会がある6月よりも前に明らかになるでしょう。経営者が恐れるのは株主総会の質疑です。スポンサー契約が更新される4月番組改編で、テレビ事業の危機が露呈します。
撤退ラッシュは、約4000億円(1日あたり11億円=テレビ局の売上)の広告料を払っていたスポンサー企業の過半以上に広がるでしょう。テレビ局は特定のスポンサーに、新聞は全国の購読世帯に情報を買ってもらう事業です。新聞購読者より5桁も少ない数のスポンサーに依存する事業構造ですから、いったん離れると速い。
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それでも「放送免許はく奪」はない。背景に総務省の天下り
一方で、放送免許はたぶん残るでしょう。フジテレビは電波帯(国民の共有資産)を総務省を通じて借りる立場ですが、フジテレビには総務省からの天下りが多数います。総務省とテレビ局は癒着しています。この問題は総務省を抜きには語れません。
どの業界でも官僚は監督すべき業界に天下っています。正常な神経では許されないことですが、官庁からの年間の天下り総数は3600人です。たとえば財務省・金融庁は銀行に天下りします。文科省は補助金を渡す学校法人、経産省は大手企業、厚労省は製薬と医療法人です。
官庁は、天下りのために予算と権限の拡大を求めます。日本の行政の根本にある問題です。補助金や業界への立法、それに企業に生じた問題を握り潰すための相談窓口と監督官庁へのパイプ役が、天下り官僚の役割です。