中国マフィアの犯罪を助長する香港の非透明な金融システム
また、独仏の公共テレビ局『アルテ』(Arte)で放映された6部構成のドキュメンタリーの中で、ヴィトキン氏は文献を検証し、検察官、元ヤクザ組員、専門家にインタビューして、欧米の経済・政治機構に潜入する中国ヤクザの手口を分析し、中国政府高官や諜報機関と密接に結びついた多面的な犯罪帝国の背後にあるメカニズムを明らかにしています。
ヴィトキン氏は、中国マフィアは共産主義内戦後、台湾、香港、マカオ、東南アジア、北米に逃亡し、そこで定住し、現地社会に大きな影響を与えたと解説。1980年代から始まった改革開放以降、中国に復帰し、徐々に中国共産党政権と互恵関係を築いていったと指摘しています。
たとえば、深圳では、組織犯罪で数億人民元を得る代わりに、現地のインフラプロジェクトに投資しました。また、2019年に香港で民主化運動と反中デモが勃発した際には、三合会が中国共産党の人民弾圧に協力し、北京に奉仕する犯罪帝国となったと論じています。
ヴィトキン氏は、三合会をはじめとする中国マフィアは、中国の勢力拡大に伴い、アジア太平洋やアフリカで拡大しており、北京の「一帯一路」構想とも連携した新たな贈収賄・密売ネットワークを作り出していることを暴露。
さらに近年、ミャンマー、タイ、ラオスにインターネット詐欺センターを設立し、人々を誘拐して働かせ、多くのヨーロッパ人を電話詐欺の餌食にしていることも指弾しています。
ヴィトキン氏は、中国マフィアが世界各地で性売買、違法賭博、恐喝、麻薬密売などの違法行為に従事しているが、最も巧妙なのは、マネーロンダリングだといいます。
フランス警察はヴィトキン氏に対して、モロッコの麻薬密輸ネットワークからモルドバのマフィアまで、フランス国内で活動する犯罪組織のマネーロンダリングを中国マフィアに頼っていると明かしました。香港の非透明な金融システムが中国マフィアの犯罪を助長しているのです。
さらに最も衝撃的な告発は、強力なアヘン系鎮痛剤であるフェンタニルの密輸における中国マフィアの役割です。この麻薬は中国で製造され、メキシコやカナダの違法ルートを通じてアメリカに流入しています。
トランプ大統領が3月4日にメキシコとカナダに対して25%、中国に対して10%の追加関税を課したのは、このフェンタニルの流入元であるこれらの国への対抗措置でした。
● 米、カナダとメキシコに25%の関税発動 中国には10%上乗せ
アメリカの作家ピーター・シュバイツァー氏は、昨年出版した著書で、中国統一促進党の党首で「白狼」こと張安楽氏と、同氏の犯罪組織・竹聯幇(バンブー・ユニオン)が、メキシコのソノラ・カルテルによるフェンタニルの販売を手助けしていると非難しており、最高検察庁は、この疑惑について捜査中であると発表しました。
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