「ナラティブ」の決定的変化を象徴するサックス教授の講演
この「ナラティブ」の決定的な変化を象徴するのが、ジェフリー・サックス教授がEUの欧州議会で2月21日に行った1時間のスピーチであった。
ちなみに、このジェフリー・サックスはコロンビア大学教授であり、アメリカの歴代政権の経済コンサルタントとして、多くの発展途上国に派遣され、経済再生プログラムの立案を主導してきた人物である。
彼は計画立案の過程で、米政府の外交問題担当の高官たちと一緒に仕事をした長い経験を持つ。米政府の外交政策の立案をどのような人物が行っているのか、生々しい実体験を持っている。こうした経験から、政策立案者の実態に幻滅し、米外交政策のもっとも厳しい批判者になっている。
いまアメリカでは、シカゴ大学の国際政治学者、ジョン・ミアシャイマーがいるが、ジェフリー・サックスは、ミアシャイマーとともに米外交政策の実態と偽善性を暴く二大巨頭になっている。
ジェフリー・サックスは崩壊寸前のソビエトに派遣され、経済の市場化と自由化の計画を作成した。しかし、ロシア経済の段階的で緩やかな市場経済化のプランが、当時の国務省によって徹底的にねじ曲げられ、ロシア経済を破綻させるための手段として使われた。この体験がひとつの契機となり、米外交政策の鋭い批判者に転向したのは興味深い。
そのようなジェフリー・サックス教授が2月21日、EUの欧州議会の招きに応じ、ウクライナ戦争の原因を語る1時間程度のスピーチを行った。
いま、ロシアの権利を容認してウクライナ戦争を終結させるというトランプ政権が仲介する停戦と、そして和平交渉に強く抵抗しているのが、イギリス、フランス、ドイツを中心にしたヨーロッパのNATO加盟国である。
これらの国々は、「『自由と民主主義』の秩序を蹂躙する拡張主義の独裁国家としてのロシア」という「ナラティブ」に強く固執し、ロシアの打倒を叫んでいる。
その中心である欧州議会にジェフリー・サックスは出向き、彼らの「ナラティブ」を全面的に否定する講演を行ったのだ。以下でその講演を見ることができる。
意外にも欧州議会では、サックス教授の新しい「ナラティブ」は拍手で迎えられ、多くの賛同者を生んだ。サックス教授の講演は、それほど説得力のあるものだった。
では、サックス教授が提示する「ナラティブ」はどのようなものなのか?それは、一言で言うと、ウクライナ戦争の原因はNATOの東方拡大であり、それを主導した米外交政策の立案部隊こそ、すべての責任を負うべきだというものである。









