米国経済を襲う、中国以上の大ダメージ。あのトランプが習近平との関係修復に走らざるを得なかった理由

 

上海モーターショーでもうかがい知れる米中分離の進行

また現実に米中の分離が進んでいる実態は同時期に開催された上海モーターショーからもうかがうことができるのだ。

以前から話題の「5分の充電で400キロメートル走行できる」技術や、1,000キロメートル走行可能な電池などが注目を浴びたモーターショーでさらに大きな話題を呼んだのは、日中、中独の技術の融合だった。

例えばトヨタ自動車は車の頭脳である基本ソフト(OS)に中国の通信機器大手の華為(ファーウェイ)を採用。ドイツのBMWと日本のホンダは、車内の機能をサポートする人工知能(AI)にDeepSeekを選んだというニュースである。

新エネルギー車の生産のためには中国のIT、AI技術の活用が不可欠であることを世界に知らしめたのである。

かつてこのメルマガでも触れたように、ドイツの企業は早い段階から中国の技術を抜きにEV(電気自動車)生産は成り立たないと見切り、中国シフトを強めてきていた。

日本のメディアの一部には、そうしたドイツを「危うい選択」とネガティブに報じる傾向があった。しかし最終的には日本もその戦列に加わらざるを得なくなったのである。

自動車産業という視点からも、中国にとってアメリカは決して不可欠な存在ではない。

米ABCテレビは25日、中国からロサンゼルス港とロングビーチ港に届くコンテナが来週から29%も減少すると嘆いた。中国CCTVによれば今年3月、従来アメリカから大量に輸入していた小麦と天然ガスがついにゼロとなり、綿花の輸入は90%も減ったという。街中のレストランで出される牛肉もアメリカ産からオーストラリア産へと急速に切り替わっている。

こうして加速されてゆく「アメリカ離れ」は、米中対立が緩んだ後に簡単に回復することができるのだろうか。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2025年4月27日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録ください)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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