「魔女狩り」と「脱CO2」は同じ構造。なぜ人は陰謀論や“分かりやすいウソ”に飛びつくのか?

 

ところが、20世紀後半になって、人為的温暖化説が現れるに及び、科学は実証不可能な領域に入って行ってしまった。地球の気温は19世紀半ばから10年に約0.1℃ずつ上昇していることは事実であるが、20世紀になるまで、人為的なCO2の排出は微々たるものだったので、19世紀後半の気温上昇が人為的なものでないことは明白である。それ以外にも反証データは山ほどあるが、なぜか、日本では人為的温暖化は無謬という話になってしまった。前回書いたようにアメリカでは、トランプ大統領をはじめ人為的温暖化を信じない人が結構たくさんいる。人為的温暖化論は信じても信じなくとも自分の生活には直接的な影響を及ぼさないので、その時々の世間の気分に左右されて、信じる人も信じない人もいるわけだ。

それ以前の科学は、実証に基づいていたので、その正しさを信じざるを得なかった。スイッチを入れればテレビが付き、アクセルを踏めば自動車が走るのは紛れもない事実であるが、CO2を出せば温暖化して、排出を止めれば温暖化が止まるのは、事実として実証されているわけではない。多くの日本人は脱CO2を進めないと、地球はそのうち灼熱地獄になるという予想を信じさせられているだけである。昔の魔女裁判と同じで、魔女を退治しなければ、病気も飢饉も収まらないという人々の恐怖を煽った妄言とそっくりである。

なぜそういう妄言がメジャーになったかというと、権力とつるんだ脱CO2産業が儲かるからだ。電気自動車、太陽光発電、風力発電と、脱CO2産業は花盛りだが、地球の温度は下がっていない。前記のユヴァル・ノア・ハラリの本によれば、魔女狩りに意欲を燃やしたハインリヒ・クラーマーというドミニコ会の修道士は『魔女への鉄槌』という本を15世紀の終わり頃に出版した。『魔女への鉄槌』はベストセラーになり、クラーマーは名士となり、教皇の代理に任命された。この本は長く読み継がれ、1670年までに29回、版を重ね、多くの言語に翻訳されたという。最盛期には魔女狩りは産業になり、魔女についての情報を集めて、魔女の正体の暴き方や撃退の仕方を教える、専門の魔女狩り人たちが現れ、政府や地方自治体のために働き、高額の報酬を受け取ったという。人々の恐怖を煽って妄言を広めて、産業にする点で、現代の脱CO2産業と選ぶところがない。

脱CO2が揺るぎない産業になった頃、新型コロナが出現して人々を恐怖に陥れたーーー(『池田清彦のやせ我慢日記』2025年5月23日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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