自称「コメ担当大臣」小泉進次郎が“爆死”覚悟で突っ込んでいくべき本丸は日本農政「魔のトライアングル」だ

th20250526
 

農水相の任を預かるや、矢継ぎ早に米価引き下げ対策を打ち出す小泉進次郎氏。国民からは大きな期待が寄せられていますが、彼の「実力」に疑問を呈する声もあるようです。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』ではジャーナリストの高野孟さんが、農政を巡る小泉氏の「10年前の失敗」を詳しく紹介。その上で、同氏が本当に斬り込むべき「本丸」がどこであるかを記しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:小泉進次郎=新農相は日本農政最大のディレンマにどれだけ斬り込めるのか?

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

小泉進次郎はどこまで突っ込んでいけるか。「コメ担当大臣」が斬り込むべき日本農政最大のジレンマ

小泉進次郎は5月21日、石破茂首相に会って農相就任を受諾した直後、官邸番記者の問いに答えて「日本の農政は団体〔農協〕にあまりに気を使いすぎて、消費者目線でやらなければいけなかった改革が遅れている。コメはその象徴の一つだ」と意気込みを示した。

また同日夜の農水省での初会見では、「備蓄米の入札をいったん中止し、新たに始める随意契約の中で明確に価格を下げていきたい」と述べ、さらに22日以降にはあちこちのテレビに出演して「早ければ6月頭に備蓄米を2,000円台で店頭に並べたい」とまで踏み込んだ。

「大山鳴動して鼠2~3匹」だった10年前

この進次郎流儀には既視感があって、10年前に自民党農林部会長となった彼が安倍晋三=竹中平蔵の新自由主義的「何でも規制緩和」路線の先兵となって農協を悪者に仕立てて斬り込んだ時と、同じパターンになりかねない。

正面切ってタブーに挑戦し、大胆に問題点を指摘して期限を区切って改革を求めるところまでは小気味よい限りなのだが、実際には切っ先が急所を外れていたり、そんな短期では到底実現不可能であったりして、大山が鳴動した割には鼠は2~3匹出ただけといった結果に終わった。

そもそもその時に彼が、日本農政の最大の矛盾である米の「減反」政策とその背景にある《自民党農水族+農水官僚+農協》の「魔のトライアングル」とまで呼ばれてきた構造という本丸に斬り込んでいれば、日本人の主食というのみならず、日本文明の根幹であり天皇制の基礎でさえある水田稲作農業が、こんな風に制御不能なほどの大混乱に晒されて人々を不安に陥れるという醜態を演じることはなかったはずなのだ。

確かに進次郎は、父親に似て、勘の鋭さは優れていると思うが、それだけに頼っていたのでは、いつまで経っても戦術巧みな「突撃隊長」の役回りしか回ってこない。大局を見渡し戦略を組み立て、物事を大きく動かしていく「指揮官」に成長していくために、降って湧いた今回の機会を大事に活かしてくれることを望むばかりである。

この記事の著者・高野孟さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 自称「コメ担当大臣」小泉進次郎が“爆死”覚悟で突っ込んでいくべき本丸は日本農政「魔のトライアングル」だ
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け