自称「コメ担当大臣」小泉進次郎が“爆死”覚悟で突っ込んでいくべき本丸は日本農政「魔のトライアングル」だ

 

壊滅的打撃を被ることになりかねないコメ農家

確かに米の高騰は異常で、4月28日~5月4日の店頭価格は5キロ当たり4,214円と、前年同期の2倍に達した。これは余りにもべらぼうで、消費者の立場からすれば1日でも早く価格を抑えて欲しいと思うのは当然で、小泉新大臣の「6月にも2,000円台の備蓄米が店頭に並ぶようにしたい」という宣明に期待が高まることになる。

しかしここには、消費者も頭を冷やして考えてみるべきいくつもの問題点がある。

第1に、5キロ=4,214円ということは、1俵=60キロ=5万0,568円になる。図1で見ると、

(1)その1俵の24年産米を農家はいくらでJAに売り渡しているかというと1万9,200円(5キロ換算で1,600円/24年7月)で、

(2)それをJA・全農は卸売業者に2万1,499円(5キロ1,792円/同9月)の相対卸売価格で売り捌き、

(3)それを小売業者は消費者に売って4万8,216円(5キロ4,018円/同12月)の売上を得ている。

これは、鹿児島産のコシヒカリという上級種を例にとって三菱総合研究所の稲垣公雄=研究理事が作成した図で、補足すれば、

(1)の1万9,200円は高い方の値段で、全国的には1万6~7,000円程度が多かったと、注に記されている通りである。

(2)の相対取引価格は昨年9月の値で、その後、今年4月には過去最高の2万7,102円に達してる。

(3)の4,018円は24年12月のもので、それが4月28日~5月4日にはさらに上がり4,214円になったのだが、基本構図はこの図の通りである。

『令和のコメ騒動』(2)コメ価格の一般的な決まり方

さてそこで問題は、生産者が1年間を費やして、それこそ手塩にかけて慈しむように育てて収穫した米を1万9,200円でJAに納めたものが、末端で5万0,568円で捌かれていることをどう考えたらいいのか、である。

この差額3万1,368円の流通系の取り分は大きすぎるので、そこを削って兎にも角にも小売価格を下げるべきだというのが進次郎流儀の消費者目線ということなのだろう。ところが参院選での受けを狙って乱暴にやろうとすると、その反動が小売から卸、全農へと逆流して、結局、米農家が壊滅的打撃を被ることになりかねない。

図1を見る限り、利幅が一番大きいのは卸から小売にかけてだが、これはすべて個別の相対取引の駆け引きを通じて決まってきていることで、それを一律に抑え込む方法を進次郎は持ち合わせているのだろうか。一般入札を止めて「随意契約」に切り替える――ということは事実上、政府による公定価格への逆戻りだが、それが米価全般に与える影響をどう計算しているのか。

いや、進次郎がとりあえずやろうとしているのは、今回放出した備蓄米を1日も早く5キロ=2,000円台で店頭に並べさせることだけだから、そんなに難しくないし、とっくに政府が買い上げてしまっておいた米だから値段を下げても今更生産者に難が及ぶことはないと解説していた人もいたが、小売・卸に一律価格規制を被せることの至難という点では同じだろう。

どこかのTVワイドショーで取材に応じたスーパーの社長が、「そんな(2,000円台に下げる)ことがわずか1、2週間で出来るなら神技で、小泉さん、次の総理決定だ」と語っていた。

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