公務員が法律を当然のごとく破る異常。岐阜・神戸町“凶悪いじめ事件”でも露呈した子どもを守らぬ国ニッポン

 

「重大事態いじめ」を把握していない岐阜県の異常

岐阜県では、市区町村管轄で発生した重大事態いじめの報告を、市区町村からの報告がない限り把握していないというのだ。

毎年、文部科学省が「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」を発表する。これで、いじめの認知数や不登校の数、生命や酷い心身の苦痛があったとする「重大事態いじめ」の数などがわかるわけだが、文科省は各都道府県からこの数を集めるのであり、神戸町が岐阜県に報告しなければ、数に反映されないことになるのだ。

私自身、こうした報告等は当たり前に行われているものだと思っていたが、被害側とその協力者等が岐阜県から聞いた話によれば、市区町村が報告してこないケースも普通にあり、それについては把握が出来ず、強制力もないから報告しろと命じることもできないから、時期が来れば把握している数で報告することになるという。

つまり、神戸町は被害側に報告書を提供することもなく岐阜県にも報告せず、ともすればこれは文科省の白書にも反映されることはないというわけだ。被害側が県に報告するように打診しても、やっと報告すると言い出したが、被害側としては正当な調査報告書が手元にない以上、所見書を出すことも厳しい。

この記事を書いている間、神戸町は被害側の情報開示に6月12日に応じると回答があったようだ。少しホッとする反面、なぜここまで町教委が抵抗をし、被害側に妨害し続けたのか、一方で、これが当たり前にように出てきてしまうことが問題ではなかろうか。

本件を第一報等で取材をした記者によれば、学校側の問題なども強く指摘されており、町教委にとっては不都合だったのではないかという見方もあるようだ。

国(文部科学省)はいじめの増大やその内容の酷さなどから、しっかりとまずは把握する必要があるなどとして、令和5年3月10日に各教育委員会に依頼をしている。

令和5年3月10日いじめ重大事態に関する国への報告について依頼

令和5年4月1日より、文部科学省はこども家庭庁とともに、各学校又は学校の設置者が行ういじめ重大事態調査について、必要に応じて助言等を行い、運用改善を図る等の取組を行うこととしています。このため、各学校及び学校の設置者におかれましては、いじめ重大事態の発生に関する報告、いじめ重大事態調査の開始に関する報告、いじめ重大事態調査報告書の提出に御協力いただきますよう、よろしくお願いいたします。

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令和5年3月10日いじめ重大事態に関する国への報告について(依頼)

ここが「依頼」ということだから、岐阜県の言うことは確かなんであろうが、これでは、胸三寸で報告しないことも容易にできてしまうということになろう。

いじめ法は議員立法であった。関わった議員から私はこういう話を聞いたことがある。

まさか当然に法律を守るはずの公務員が、当たり前のように法律を破るとは思いもしなかった。

実際は、悪用もするし、法の理念やどういう経緯でできたかなどを無視して、条文に書いていないからやらない、ガイドラインは法律じゃないと守らないなどが横行しているわけだ。もはや、自治体、行政が「いじめをなくすために」真っ当な目的のもと動いていることすら疑わなければ、こどもたちを守れない状態なのかもしれない。

神戸町で起きている今の問題を見れば、守られるのは町教委のメンツくらいで、こどもは守られないという異常事態が起きているわけだ。

いじめの被害者や重大事態被害者、その関係者は自分たちの事件が文科省の白書に反映されているか、首長報告されているかなどを調べた方がいいだろう。そして、こうしたいい加減なことが起きる現在を放置しないためにも、法改正は必須だろう。

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