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戦犯は安倍氏。前政権の丸パクリ「骨太の方針」を参院選の公約に掲げた石破首相の図太い神経

間近に迫った参院選に向け各党が公約を発表する中、自民党として2つの大きな柱を掲げる旨を表明した石破氏。しかし人気ブロガーのきっこさんは、「妙な既視感に襲われた」と言います。今回の『きっこのメルマガ』では、その「既視感の元」となった岸田政権による昨年の「骨太の方針」内の記述を紹介。その上で、誰が「骨太の方針」を単なる掲示板のようなものに劣化させてしまったのかについて解説しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:骨太の方針という茶番劇

太平洋戦争並みに犯罪的。アベノミクスの失敗を認めたくない安倍氏“ウワゴトの連投”で掲示板に成り下がった「骨太の方針」

石破茂首相は9日、夏の参院選に向けて、次のように述べました。

石破首相 「2040年、名目GDP1,000兆円の経済を目指します。平均所得は現在から5割以上上昇させるということを、来たる参議院選挙における一番目の公約に掲げるということを党幹部に指示をいたしたところでございます。

おいおいおいおいおーーーーい!参議院議員の任期は6年なのに、その選挙の公約のトップに掲げるのが「15年先の名目GDPと平均所得」なのかーーーーい!つーか、今68歳のお前は、15年後の83歳まで首相を続けるつもりなのかーーーーい!…というわけで、自分が生きているかどうかも分からない15年も先の目標を公約に掲げるなんて、無責任にもホドがありますし、有権者をバカにするにもホドがあると思いました。

この日の4日前の6月5日には、厚生労働省が2025年4月分の「毎月勤労統計調査(速報値)」を発表しましたが、こちらでは名目賃金から物価変動の影響を除いた「実質賃金」が、前年同月比1.8%減となり、4カ月連続のマイナスだと報じられたばかりです。その上、昨年夏の2倍以上で高止まりしたままのコメの問題など、多くの国民は、今、困っているのです。それなのに「15年後には平均所得を5割以上上昇させます」って、はぁ?

サスガは年頭会見で、終わりの見えない物価高騰に苦しんでいる国民に向けて「楽しい日本」を目指すと抜かした石破首相です。多くの国民が「楽しくなくていいから、取りあえず『苦しくない日本』にしてくれ!」と総ツッコミを入れたのに、石破首相の耳には「国民の声」に対する特殊なフィルターでも装着されているのでしょうか?

しかし、今回の報道を知ったあたしは、石破首相の相変わらずのトンチンカンぶりに呆れるよりも先に、妙な既視感に襲われたのです。そこで過去の新聞記事を検索してみたところ、ちょうど1年前の2024年6月21日に「名目GDP1千兆円へ『骨太の方針』閣議決定」という見出しの記事が見つかりました。

岸田文雄首相は6月21日、今年の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を閣議決定した。今後の予算編成や法整備の土台になるもので、デフレ完全脱却の実現に向けて「所得増加」及び「賃上げ定着」などが盛り込まれ、現在600兆円弱の名目GDPを2040年頃に約1千兆円にする将来像も示された。

本日2回目のおいおいおいおいおーーーーい!今回の石破首相の発言って、1年前に岸田首相が言ったことをなぞっただけじゃーーーーん!…というわけで、昨年2024年の政府の『骨太の方針』を見てみたら、こんなふうに書いてありました。

(前略)我が国の成長力を高める取組が必要である。こうした経済においては、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現の下で、2040年頃に名目1,000兆円程度の経済が視野に入る。

つまり石破首相は、1年前に岸田首相が何の根拠もなく「骨太の方針」に盛り込んだ耳障りの良い将来像を、あたかも自分が考え出した目標であるかのように大々的に発表し、それを夏の参院選の公約のトップに掲げたわけです。

そして石破首相は、この「2040年の名目GDP1,000兆円」と「平均所得の5割以上上昇」を、今回も6月21日に閣議決定する今年の「骨太の方針」に盛り込むように指示をしたのです。毎度のことですが、あたしは開いた口からエクトプラズムが流れ出し、幽体離脱しちゃうほど脱力しました。

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極めて現実的なものだった小泉政権時の「骨太の方針」

…そんなわけで、良く耳にするこの「骨太の方針」という言葉ですが、最初に使ったのは2001年6月、当時の小泉純一郎首相でした。小泉首相が「聖域なき構造改革」のために内閣府に設置した「経済財政諮問会議」での議論を、当時の宮澤喜一財務相が「骨太」と表現したことから、この会議を経て閣議決定された「経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」を「骨太の方針」と呼ぶようになったそうです。これが、クルクルバビンチョパペッピポ、ヒヤヒヤドキンチョのモ~グタン!…というわけで、この言葉の『はじめて物語』でした。

小泉首相の懐刀で、第2次安倍内閣から現在の石破内閣まで内閣官房参与をつとめて来た飯島勲氏の著書『小泉官邸秘録』によると、当時の小泉首相は「骨太の方針」について、次のように説明したそうです。

小泉純一郎首相 「骨太の方針というのは大きな傘みたいなもんだ。総論をしっかり抑えて、その下に各省の改革プログラムを組み込んでいく。そうすればみんないやでも改革案を考えざるを得なくなる。

この言葉の通り、確かに小泉政権の時の「骨太の方針」は、極めて現実的なものでした。まずは総論を作成し、各論の実施プロセスを各省庁に作成させ、定期的に進捗状況を報告させながら、政策全体の進行を管理していました。そのため、政策の実現率が高く、たとえ政権が変わったとしても「骨太の方針 第2弾」として、次の首相にバトンタッチされて行きました。

しかし、2012年12月に第2次安倍政権がスタートすると、この「骨太の方針」には、実現のための具体策がない「絵に描いた餅」ばかりが書き連ねられるようになったのです。第2次安倍政権1年目の「骨太の方針」には、今も全国民が尻ぬぐいさせられている「アベノミクス」の3本の矢のうちの第1の矢「大胆な金融政策」が堂々と掲げられています。

ここには「日本銀行は消費者物価の対前年比上昇率2%を物価安定目標とし、できるだけ早期にこれを実現する」と明記されています。安倍首相が日銀の白川総裁と首をすげ替えた黒田東彦総裁も「2年で2%を達成できなければ辞任する」とまで述べました。しかし、安倍首相がラッパを吹いた「黒田バズーカ」は、何度発射しても不発でした。それなのに、黒田総裁は2年どころか2023年まで10年間も居座り続けたのです。

翌2014年の「骨太の方針」では「アベノミクスのこれまでの成果」として「三本の矢の効果で実質GDPがプラス成長」などと書かれています。しかし、これはあたしが以前から指摘しているように、GDPの試算にこれまで加えなかった不動産売買や設備投資などを片っ端から上乗せした「水増しデータ」によるペテンなのです。それなのに安倍首相は「三本の矢によって経済の好循環が動き始めたので、さらにアベノミクスを加速させていく」などと大ボラを吹いて自画自賛しています。

翌2015年の「骨太の方針」では「三本の矢によってデフレ脱却・経済再生と財政健全化は双方ともに大きく前進した」などと現実とは大きく乖離したファンタジーが明記された上、トドメに次のフレーズが垂れ流されました。

実質GDPの成長率は、平成25年度の2.1%の後、平成26年度は消費税率引上げの影響等からマイナス0.9%となったが、今後については堅調な成長が予想されている。

水増し試算をしてもマイナスなのだから、実際には0.9%どころか2%を超えるマイナスなのに、何の根拠もなく「今後については堅調な成長が予想されている」などと抜かす無責任ぶり。あたしは今でもハッキリと覚えていますが、2014年4月に消費税を5%から8%に引き上げた直後、安倍首相と当時の麻生太郎財務相は口をそろえて「一時的に消費が冷え込むが、3カ月ほどでV字回復する」と断言したのです。

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「言い訳」を書き続け露呈した安倍氏の往生際の悪さ

しかし、3カ月どころか8カ月後の12月になっても、年が明けて春が来て増税から1年が経っても、消費は依然として冷え込んだままでした。結局、消費の回復に丸2年も掛かり、ようやく経済が少し上向きになり始めたと思ったら、2019年10月、またまた消費税を10%に増税したため、元の木阿弥となったのです。そして、年が明けたら新型コロナという追い打ちが炸裂したのです。

最終的に「アベノミクス」という政策によって何がどうなったのかと言うと、名目GDPは500兆円台のまま横ばい状態で、実質賃金はスタート時よりも減少し、国の借金だけが約2倍の1,200兆円にまで膨れ上がったのです。まさに「百害あって一利なし」と言うか「誰得?」と言った感じの戦後最悪の失策です。経済学者の中には「アベノミクスは太平洋戦争並みの犯罪的とも言える大失敗であり、民間企業であれば経営陣が3回ぐらい総退陣しなければならないレベル」と指摘する人もいます。

それでも、絶対に「アベノミクスの失敗」を認めたくない安倍首相は、毎年の「骨太の方針」に「道半ば」「道半ば」と言い訳を書き続ける往生際の悪さを披露したのです。そして、小泉政権時代には「政策を実現するための具体的な工程表」だった「骨太の方針」が、7年8カ月も続いた第2次以降の安倍政権によって、実効性ゼロの「絵に描いた餅」を書き連ねるだけの掲示板になり果ててしまったのです。

そして、そんな掲示板に、菅義偉首相も岸田文雄首相も、安倍首相に倣って「絵に描いた餅」を書き続けて来た上に、現在の石破茂首相までもが、来たる6月21日に「15年後のGDPと平均所得」というバカバカしい寝言を書き込む予定なのです。もはや茶番劇と化してしまった「骨太の方針」ですが、本当に図太いのは、昨年の岸田首相の方針をそのまま丸パクリして参院選の公約に掲げた、石破首相の神経だと思った今日この頃です。

(『きっこのメルマガ』2025年6月11日号より一部抜粋・文中敬称略)

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