日本と同じく「極めて勤勉実直」のイメージが強いドイツ。そんな国で今、「病欠日数」が激増していることをご存知でしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、その実情をデータや現場を知る人物から得た情報を示しつつ紹介。さらに自身が「病欠」を評価すべきと考える理由を解説しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:病欠とやる気のはざまで
プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。
人間の価値は仕事の成果で決まるものではない。病欠とやる気のはざまで
「熱が何度でたら、会社って休んでいいのでしょうか?」
新入社員にこう聞かれたことがあります。
さて、あなたはどうですか?何度熱が出たら休みますか?
日本では「休む」こと自体難しく考える人もいますし、かつては「熱でも出社」は美徳とされていました。
そんな中、日本人と似ているとされるドイツで「病欠sick leave」が社会問題になるほど増えているというのです。
経済協力開発機構(OECD)がまとめた世界各国の年間の病欠日数によると、ドイツは22年に従業員1人あたり24.9日でダントツのトップです。前年から4.9日も増加し、最も少なかった06年から12日ほど多い水準で増加傾向が続いています。
バカンスの国フランスでさえ14.2日ですから、ドイツおそろべし!一方、日本ではだいたい3日前後ですから、これも逆の意味におそるべし!です。
ドイツでは病欠の際には診断書が必要ですが、診断書があることで給与全額が保証されます。原則は年間最大6週間(30日)で、その後は健康保険基金が傷病手当金を支払うなど、徹底的に働く人が保護されているのです。
そこで“ドイツ特派員”に現状を確認したところ「sick leaveは日常茶飯事」と即答。「ドイツ人はすぐ病気になります(書類上)。バカンス前はがぜん元気になるのに、バカンス明けはすぐに病気になる。いったいいつ働くの?と怒りたくなる」と頭をかかえていました。
コロナ禍以降、医者も積極的に診断書を出すようになったことも病欠のハードルを下げているようです。
ただし、“特派員”によれば、ハイレベルのマネジメント層は「風邪ひいたことないのですか?」というくらい強靭でハードワーク。“フランス特派員”も「フランスのCEOレベルは、いつ寝てるんだ?というくらいハードワークする」と教えてくれました。
いわば「働き方の二極化」です。
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