なぜ石破茂は「海外で評価」されているのか?世界が見る「信頼」と国内が抱く「違和感」とのギャップ

 

4.世界が日本に期待するリーダーシップ

4-1.トランプ疲れと協調性の需要

2025年の世界情勢は、トランプ再選による地政学的緊張や、気候変動、経済の不確実性で不安定になっている。トランプ大統領やハンガリーのオルバン首相のような独善的なリーダーシップに対し、国際社会は「トランプ疲れ」を感じ、協調的で安定したリーダーを求めている。

そうした背景において、日本の首相には、以下の役割が期待されている。

4-1-1.日米同盟の安定化

トランプ政権の予測不能な外交姿勢に対し、日本は日米同盟の信頼を維持する役割を担う。

石破氏のトランプ会談での成功は、この期待に応えた例だ。官僚のサポートを受けた慎重な外交は、米国やG7諸国にとって「安心感」をもたらしている。

4-1-2.アジアでのバランス外交

米中対立が続く中、日本は中国や韓国との関係改善にも配慮する必要がある。石破氏の日中関係改善への努力や、経済的な結びつきの重視は、アジア地域での日本の役割を高めるものだ。これにより、日本は「橋渡し役」として国際的な信頼を得ている。

4-1-3.多国間協力の推進

気候変動やグローバルヘルスなど、国際的な課題には多国間協力が不可欠だ。石破氏のリベラルな姿勢や、G7での積極的な発言は、こうした協力の推進役としての評価につながっている。同時に、日本の高い国家ブランド力も、この役割を後押している。

4-2.国内とのギャップ:強いリーダーシップの期待

一方、国内の国民は「強いリーダーシップ」を求める。安倍元首相のような、カリスマ性や明確なビジョンで国民を牽引するリーダーが理想だ。

しかし、国際社会が求める協調性や安定性は、国内の「強いリーダーシップ」とは、必ずしも一致しない。石破氏の慎重で官僚主導のスタイルは、国際的には高評価だが、国内では「物足りない」と映るようだ。このギャップは、日本の首相が直面する構造的な課題といえよう。

5.官僚主導とリーダーシップのバランス

石破首相の評価ギャップは、「個人としての石破」と「日本政府の代表としての石破」の印象の違いを象徴している。

国内では、失言やスキャンダル、党内基盤の弱さが個人批判に繋がる。一方、海外では、日本の国家ブランドや官僚のサポートが信頼感を高めている。

トランプ疲れの国際社会では、協調的で慎重なリーダーが求められ、石破氏のスタイルはこれに合致している。しかし、国内では、国民の生活実感に直結する成果、強いリーダーシップが求められ、官僚主導の安定感だけでは不満を解消できない。

この状況は、どんな首相でも直面するジレンマだ。「官僚の言うことに耳を貸し、慎重に行動する」リーダーは、国際的には高評価を得やすいが、国内では変化や共感を求める国民の期待に応えにくい。

石破氏が今後、国内での支持を回復するには、物価対策や経済成長など、具体的な成果を打ち出す必要がある。一方、国際的な評価を維持するには、日米同盟や多国間協力を重視し、協調的な姿勢を続けることが有効だ。

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