2023年、中国国家主席としては異例の3期目続投を決め、「終身皇帝」の座を確実なものにしたとも囁かれた習近平氏。しかし今、絶対的権力を手にしたはずの習氏を巡る衝撃的な「噂」が世界中を駆け巡っています。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では、習近平氏失脚の兆候を伝える様々な記事を紹介。その上で、中国の権力闘争が日本を含む周辺国に「良からぬ影響」を与える可能性を指摘しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:【中国】世界に広がる習近平失脚の噂。日本への影響は?
習近平ついに失脚か。世界に広がる“終身皇帝”退陣の噂と日本への影響
● 美前國安顧問佛林:中共發生權力更迭 習近平恐已失勢(元米国国家安全保障顧問のマイケル・フリン氏は、中国共産党で権力交代が発生し、習近平氏が既に失脚した可能性があると述べた)
ここ数日、中国共産党総書記の習近平が権力を失ったのではないかという噂が、国際的な注目を集めています。
アメリカ大統領ドナルド・トランプの第1期の国家安全保障顧問マイケル・フリン(Michael Flynn)は6月27日、Xプラットフォームに「注意! 中国共産党で明らかに権力交代が起こっている。中国観察者は、中国共産党の核心メンバー、特に政府と国家安全保障部門の官僚が信頼を失っている点に注意深く監視する必要がある」と投稿し、中国共産党指導部の変動がもたらす影響は巨大だと述べました。
フリンの投稿には2枚の図が添付されており、1枚目は中国共産党の官僚が人民大会堂で会議を開く場面で、もう1枚は、権力序列6位の丁薛祥(国務院副首相)、陳吉寧(上海党書記)、張又侠(中央軍事委員会副主席)の3人を写したものでした。
その中では、丁薛祥が中央に配置され、総書記の「唯一無二の地位」を暗示し、陳吉寧は首相候補、張又侠は常務委員に昇格し、中央軍事委員会主席の後任となる可能性が高いということを暗示しているという憶測が広がりました。
フリンは元アメリカ陸軍中将、アメリカ国防情報局長官、国家安全保障顧問を務め、米軍の最高情報責任者でした。一部のネットユーザーは、彼の暴露には高い正確性があると考えています。
最近、習近平の権力移譲や健康問題に関する噂が、様々な兆候で裏付けられ、後継者候補の推測が世間で広まっています。
冒頭に掲載した「自由時報」では、複数の情報筋の分析として、習近平は苗華と何衛東という重要な側近を軍隊の監視役として起用する計画だったと報じています。反腐敗を口実にして張又侠の勢力一掃を図り、軍委第一副主席の張又侠を失脚させる機会を伺っていたわけです。
ところが張又侠と背後の元老たちの反撃に遭い、苗華は今年6月に中央軍事委員会委員の職を解任され、中央軍事委員会副主席の何衛東は今年3月下旬に腐敗疑惑で調査を受け、現在も行方不明となっています。
現在、張又侠は軍権を完全に掌握しており、習近平は依然として中央軍事委員会主席の肩書を残しているものの、実質的には名目上の存在に過ぎず、軍内でまだ倒れていない高級将校はすべて張又侠に付いているといわれています。
フリンの投稿が示したように、中国共産党の新指導部の中核を成す3人のうち1人が張又侠であることは、間違いないと「自由時報」は論じています。
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裏ですべてを操っている中国共産党の重鎮たち
丁薛祥が中国共産党総書記に就任するという噂は、以前からありました。内部情報によると、汪洋、胡春華、丁薛祥の3人が総書記の座を争うとの報道が以前ありました。習近平は反習派と交渉し、自身が退任する場合、丁薛祥が総書記に就任するよう要求したと伝えられています。
しかし、張又侠は習近平を後ろ盾とする丁薛祥の継承に反対し、団派に属する胡錦濤と温家宝は、汪洋または胡春華の継承を推し、張又侠もこれを支持していました。
上海市長の陳吉寧については、北京の消息筋によると、胡錦濤に接近したため、首相に就任する可能性があるとされています。
さらに、元米国駐バミューダ大使で、北京の対外経済貿易大学で教鞭を執ったグレゴリー・W・スレイトン(Gregory W. Slayton)は、6月28日に『ニューヨーク・ポスト』で、習近平が最近示した退陣の兆候を詳細に指摘しています。
記事では、過去数ヶ月の状況から、習近平の退陣局面が迫っている可能性が高く、中国共産党の重鎮たちが裏で全てを操っているとし、2022年の中国共産党第20回全国代表大会で習近平に会場からの退場を促されて恥をかかされた胡錦濤もその一員だと指摘しています。
記事では、現在、習近平を支持する解放軍の高官数十名が粛清され、あるいは不可解な死を遂げ、その地位は他の派閥の将軍に置き換えられており、軍の実質的な支配者は、習近平を支援したが後に決裂した張又侠だとしています。
記事は、習近平の健康状態も懸念されており、今年8月の中国共産党第20回中央委員会第4回全体会議で退任する可能性が高いと指摘しています。または、象徴的な役職に留まる可能性もあります。
その他の兆候として、習近平の父・習仲勳が陝西省富平県に建設された記念館が、今年5月の開館時に突然「習仲勳」の名称を廃止し、「関中革命記念館」に改名されたことを挙げています。
さらに、今年5月下旬から6月上旬の約2週間の期間、外国の要人を接待したのは他の中国共産党の高官であり、習近平本人は行方不明となり、中国共産党の機関紙『人民日報』もこの期間中に習近平に関する情報を掲載しなくなったとも述べています。
加えて、中国共産党中央政治局は6月30日に会議を開催、公式メディアの『新華社』は、この会議を中国共産党総書記の習近平が主宰し、新たな条例「党中央の重大な業務に関する意思決定・調整機関の業務条例」を審議・採択したと報じました。
この条例の設立目的は、「党中央の重大な業務に対する集中統一的な指導を強化し、重大な任務の遂行を推進すること」にあるとされていますが、専門家は、この新機関の設立が、習近平の権力がさらに弱体化しているという信号を再び示していると指摘しています。
「自由時報」によれば、シンガポール管理大学法学教授の高樹超(ヘンリー・ガオ)は6月30日、Xに投稿し、「新華社が報じたように、中国共産党中央委員会は新たな『意思決定と議事調整機関』を設立した――もし習近平が依然として全権を掌握しているなら、これはほぼ不要な措置だ」と述べたそうです。
高樹超はさらに、最近習近平に忠誠を誓う軍の高官が次々と更迭されている状況を踏まえると、これは習近平が徐々に支配力を失いつつあることを示している可能性があると指摘しています。
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国際問題や戦争を引き起こしてきた中国の権力闘争
海外在住の時事評論家・李林一氏は、これは中南海が重大な変化の信号を発していることを示していると指摘した。この新機関は習近平を事実上排除するもので、中国共産党の老練な指導者たちの手に落ちる可能性が高く、機能は鄧小平時代の「中央顧問委員会」に類似している。新条例がこのタイミングで公布されたことは、現在の中国共産党内部の激しい権力闘争と明らかに関連している。
一部のネットユーザーはX上でコメントし、会議は表面上は習近平が主宰しているが、中国共産党は徐々に過去の「集団指導体制」に戻りつつあると指摘。明らかに習近平の長期独裁体制を回避する動きだと分析しています。また、別のユーザーは「このクーデターを仕掛けたのは誰か?」と疑問を投げかけたとのこと。
このように、最近、習近平の権力失墜に関する報道が国際的な注目を集めており、さまざまな憶測が飛び交っています。
中国の権力闘争は、時として国際問題や戦争を引き起こします。胡耀邦が失脚した際には、靖国神社参拝をする中曽根康弘首相との交友関係が中国国内で問題視されたと伝えられ、中曽根首相は「胡耀邦が苦境に陥る」という理由から、靖国公式参拝を中止してしまいました。
鄧小平は権力を自分に集中させるため、中越戦争を主導しました。政敵と関係が近い部隊を、戦争の最前線に送って敵に攻撃させ、力を削いだとも言われています。
したがって、中国の権力闘争により、今後、反日運動の高まりや、台湾有事につながる可能性も否定できません。現在の中国はかなり不安定な状況に陥っている可能性があるのです。
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※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2025年7月2日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。
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