中居正広、国分太一、田原俊彦。国連人権理事会も「ハラスメントの法的定義が曖昧で加害者が処罰されないケースが多数」と警鐘鳴らす日本芸能界の異常性

 

「ビジネスと人権」遅れる日本 国際標準との深刻なギャップ

日本企業における人権軽視の企業文化は、現状、グローバルな「ビジネスと人権」潮流との間に大きな乖離を生じさせている。

日本企業の人権意識や内部統制の低さは国際基準から大きく遅れている。欧米では「ビジネスと人権」に関する法整備や人権デューデリジェンス(DD)の義務化が進み、企業活動における人権配慮が当然視されている。

一方、日本では2020年に政府が「ビジネスと人権」に関する行動計画(NAP)を策定し、企業に人権尊重の取り組みを求め始めたものの、法的強制力は弱く、現場での実効性も限定的(*2)。

厚生労働省の調査でも、過去3年以内に職場でパワハラを受けた人が約3人に1人と高率であるにもかかわらず、ハラスメント対策を実施している企業は半数程度にとどまっている。

そもそも、日本では人権という言葉や制度は定着しているが、その本質的な意味は浸透していない。日本の人権観は欧米の「天賦人権説」と異なり、「国家から与えられるもの」として捉えられてきた。これにより、権力に対して権利を主張する考えが根付きにくい環境が形成(*3)。

学校教育でも、差別の歴史は教えられるが、「生まれながらの不可侵の権利」という本質的教育が不足している。そのため権利主張は「わがまま」とされ、とくにその場の「空気を読む」ことが優先される(*4)。

米欧では厳罰、日本は無力 ハラスメント対策における構造的後進性

日本でセクハラやパワハラの被害が後を絶たない背景には、司法制度が被害者保護の役割を十分に果たしていないからだ。たとえば、あるスポーツ指導者によるセクハラ事件では、被害者が約450万円の損害賠償を求めて提訴したものの、裁判所が認めたのはわずか11万円にとどまった(*5)。

司法アクセスの困難さも、日本の法制度全体にも表れている。2019年時点で、日本の弁護士は人口3,100人あたり1人にとどまり、アメリカ(約240人に1人)、ドイツ(約500人)、イギリス(約400人)と比較して極端に少ない(*6)。とりわけ地方では弁護士へのアクセスが制限されやすく、労働問題を含む人権侵害に対する法的支援体制が脆弱だ。

行政による労働監督機能も十分とは言いがたい。日本の労働基準監督官は約3,000人と一見多いが、実際に臨検・監督業務を行う実働人員は約2,500人にすぎない。全国の事業所数は約400万件にのぼり、1人の監督官が約1,300事業所を担当する計算になる。その結果、1つの事業所が監督官の立ち入りを受けるのは約10年に1度という低頻度にとどまる(*7)。

一方、欧米諸国ではより厳格な労働監督体制が敷かれている。米国では2,000人超の監督官が強制執行権限を有し、違反企業に対して実効性のある制裁措置を取ることが可能だ(*8)。欧州でも、抜き打ち検査や高額罰金などが制度化されている(*9)。

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