キラキラの裏にある“メディアの闇” アナウンサー志望者が見抜けない業界の構造問題
近年、ハラスメント被害の告発が相次いでいる。しかし、単に「私たちは被害者でした」と表明するだけでは、問題の本質──すなわち、業界構造の歪みや日本社会の闇──を温存したままにしてしまう。
とくにアナウンサー職は今なお「夢の職業」として強いブランド力を持つ。特にキー局のアナウンサーは高収入で、芸能界やインフルエンサーとしての道も開かれている。こうした華やかなイメージが、若者を惹きつけてやまない。
しかし実態は、過酷な労働環境やハラスメントリスクをはらんでいるのが現状だ。放送局は「人気企業」としての表面的な魅力ばかりを強調し、長時間労働や上下関係の厳しさなど、闇の部分を覆い隠す傾向がある。志望者が企業研究を行ったとしても、内実は入社前に見えにくい。
もちろん、志望者側の情報収集不足も課題ではある。しかしそれは個人の責任だけでなく、業界の閉鎖性や情報の不透明さにも起因している。OB訪問や就活サイトではポジティブな話題ばかりが共有され、実態に迫る情報は乏しい。
また、採用プロセスが特殊で(カメラテスト、面接対策など)、学生は準備に追われ、企業文化を深く分析する余裕がない。加えて、日本の教育システムは偏差値偏重であり、批判的思考や社会構造を見抜く力を育てにくい構造にも問題があるだろう。
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■引用・参考文献
(*1)「国連ビジネスと人権の作業部会による訪日調査最終報告書を踏まえて、日本政府及び企業に対して国連ビジネスと人権指導原則に基づく責任ある行動を改めて求める」特定非営利活動法人 ヒューマンライツ・ナウ 2024年5月30日
(*2)佐藤暁子「『ビジネスと人権』に関する行動計画の現状と課題」ヒューライツ大阪(一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター) 国際人権ひろば No.162(2022年03月発行号)
(*3)「『職場のハラスメントに関する実態調査』の報告書を公表します」厚生労働省 2024年5月17日
(*4)森島豊「日本人はなぜ『人権』をうまく理解できないのか、その歴史的理由」現代ビジネス 2020年6月28日
(*5)有本圭佑「スポーツ指導の場におけるセクシャルハラスメント(3)」小西法律事務所 2025年3月17日
(*6)「弁護士の人数の推移【男女/都道府県/五大法律事務所別など】」AGAROOT CAREER 2024年12月26日
(*7)家永勲「労働基準監督署の調査 定期監督・申告監督の対応」弁護士法人ALG Associates 2023年10月3日
(*8)「アメリカの労働基準監督官制度」独立法人 労働政策研究・研修機構 2018年4月
(*9)「ドイツは長時間労働をさせる企業に罰金!」ZUU online 2025年1月22日
(『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』2025年7月13日号より一部抜粋・文中一部敬称略)
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