神谷氏が街頭演説で説明した「日本人ファースト」の意味
2020年に結党した参政党の原動力になっているのはSNSによる拡散だけではない。全国に289もある地方支部と150人に及ぶ地方議員の日常活動に裏打ちされている。5年でそれほどの政治基盤をつくりあげたのは驚異的だ。
参政党は45のすべての選挙区と全国比例に10人、合わせて55人を擁立している。目標とする「10議席」以上には楽々と達しそうな勢いだ。むろん、衆院では3議席しかなく、一気に国会活動の主導権を握れるわけではない。それでも、今の人気を保てるなら、決して侮れない存在になるだろう。
参政党のキャッチコピーは「日本人ファースト」だ。神谷氏は街頭演説で、その意味をわかりやすく説明する。下記はその一節。
「国民の暮らしをしっかりと守っていく。これをわれわれはやりたい。でも、なぜ国民の生活が貧困者が増えてきたか。その背景にグローバリズムがある。多国籍の大企業がどんどん世界の経済を席巻し、そこに富が集まって、国会議員への献金で規制緩和、自由化が進み、結局みんな貧しくなった」
「世界でこれに抗おうという政治の流れが生まれている。トランプ大統領をはじめ、ヨーロッパや南米でも、反グローバリズムの政党が力を持ってきている。課題意識は、我々と一緒だ」
「外国人の資本がどんどん入り、東京の不動産はもちろん、インフラ、水源、企業の株などがどんどん買われて経営者が外国人になる。そういったことに一定の規制をかけていこうというのが参政党の訴えだ」
アメリカのトランプ現象、イギリスのブレグジット、フランスのルペン現象と同じ潮流に属していることを神谷代表自らが認めているのだ。
その思想の根底に存在するのは強烈なナショナリズムだ。参政党が作成した「新日本憲法(構想案)」には、天皇が「元首として国を代表」し、「国は、主権を有し」とされている。国民に主権があるとは書かれていない。天皇に主権があった明治憲法への回帰をめざしているのだろうか。
参政党が伸びているもう一つの要因として、神谷宗幣という政治家の持つ演説力の凄まじさがあげられる。そのテンポ、迫力、熱量に聴衆の感情は揺さぶられる。
「再生の道」代表、石丸伸二氏の理詰めでクールなカリスマ性とは異なり、教祖的な吸引力がある。2012年、吹田市議を辞職し、自民党公認で大阪13区から衆院選に出馬したのも、安倍晋三元首相にその演説力を見込まれたからだろう。
だが、神谷氏と参政党に注目が集まれば集まるほど、ネットを中心に批判の声が高まっていることもまた事実である。反ワクチン思想とオーガニック信仰に対し、陰謀論だのカルトだのと激しく攻撃する勢力も存在する。
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