日本国内にとどまらない影響。日米「トランプ関税合意」が韓国とEUに与えた思わぬプレッシャー

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7月23日に電撃的な合意を見た日米関税交渉。その内容について日本国内では賛否両論の声が上がっていますが、他国にも大きな影響を及ぼしているようです。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では著者の富坂聰さんが、日米両国の動きを注視していた韓国の反応を紹介。併せて中国とEUの首脳会談がぎこちない雰囲気に支配された背景を解説しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:トランプ関税に揺れる中国とEUの首脳会談が微妙な空気に包まれた理由

露呈した「深い溝」。トランプ関税に揺れる中国とEUの首脳会談が微妙な空気に包まれた理由

国内で批判も多い合意ではあったが、石破政権が何とかトランプ政権との関税交渉を決着させたことで、日本の株式市場は大きく値を上げた。

日米の関税合意の影響は国内にとどまらない。日本の合意が韓国とヨーロッパ連合(EU)に思わぬプレッシャーを与えてしまったからだ。

EUについては後に詳述しよう。深刻だったのは韓国だ。日本とよく似た対米貿易構造を持つだけに当初から日本の出方を注視しきた韓国メディアは、日本が合意に至ると一斉に「韓国が取り残された」という論調で報じ、交渉の未来を悲観する空気を醸成したのだ。

韓国には日本のように牛肉やコメで妥協する余地がなく、巨額投資にも限界があるからだという。

折しも第2四半期のGDP成長率が発表されるタイミングで、結果は対前期比0.6%、対前年比で0.5%とわずかながらのプラスという内容だった。

意外にも貿易は好調だったが、これには関税を見越した駆け込み需要の要素が排除できない。注目は韓国の二大産業である自動車と半導体で明暗がくっきり分かれたことだ。いうまでもなくトランプ関税の直撃を受けた自動車産業が大きく落ち込んでいて回復の見通しが立たないことが重くのしかかっている。

韓国に吹く逆風は深刻だが、同じように日米の合意がプレッシャーとなり焦っているのがEUだ。

第2次トランプ政権が発足したころから米欧の不協和音は顕著だった。関税をめぐる攻防も一進一退の状況のなか決着は遅れている。

今回、本稿で取り上げる中国・EU首脳会談(7月24日)は、そうした足元がおぼつかないEUからアントニオ・コスタ大統領、ウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長などが北京を訪れ実現した会談だった。

対米交渉が未決着という意味では、迎える中国も同じだが、両者を取り囲む状況は大きく異なっていた。

中国・EU首脳会談のニュースを報じたドイツのテレビ局ZDFは、その違いを、「中国は自信に満ち溢れています。理由はアメリカとの交渉でEUより成果を上げていると考えているからです。中国はEUに1センチたりとも歩み寄る必要性を感じていません」(現地レポーター)と伝えた。

こうした見立てが正しいか否かは別として、対米関係が緊張すれば中国とEUの関係が強化されるといったインスタントな歩み寄りが会談によって実現しなかったことは間違いない。

ちなみにZDFは会談全般を総括し「それなりに緊張感があった」と報じ、シンガポールのテレビCNAは、「深い溝が露呈した」と、より辛らつに伝えている。

会談が微妙な空気に包まれた理由について、ウクライナ問題を理由に挙げたメディアは少なくない。

前出・ZDFは北京のEU代表部にウクライナの国旗が掲げられていることを取上げ、「EUと話をするならウクライナ問題は避けて通れないという意思表示」だと解説を加えた。

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