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会談を通じて伝わったEUが中国に対して募らせる不満の正体

だが、ウクライナ問題がEUにとって重要なテーマであってとしても、中国との会談においてメインディッシュとはなりえない。中国自身この問題のメインプレーヤーだとの認識はない。中国がEU側の求めを聞き流すのは、むしろ織り込み済みであった。

結局、EUが中国に対して募らせる不満の正体は、むしろ貿易不均衡であることは今回の会談を通じてよく伝わってきた。

ZDFは

EUと中国の力の割合がここ数年不均衡に陥り、中国からEUへの輸出量がEUから中国への輸出量を上回る状況が続いている。去年のEUの対中国貿易赤字は3,050億ユーロになった。

とEU側の苛立ちを伝えている。

香港のテレビTVBは、EU側の不満の象徴として、以下の二人発言を紹介している。

「貿易や経済に関する問題では具体的な進展が必要だ。われわれはこの関係がお互いに均衡のとれた互恵的なものになることを望んでいる。EUと中国は習主席の発言のように世界の主要なプレーヤーだ。われわれはルールにのっとった秩序を堅持し、世界の課題に取り組む責任を共有している」
(コスタ大統領)

「協力関係とともに不均衡も深まり、いま(EUと中国の関係は)転換点を迎えている。関係を振り返りリバランスを取ることが必要だ。というのも関係継続のためには互恵的な関係でなければならないからだ」
(フォンデアライアン委員長)

日程を短縮して行われた今回の会談では、中国側の反応も友好一辺倒というわけにはいかなかった。

EU首脳を出迎えた習近平国家主席は、「(中国とEU)双方の間に根本的な利害の衝突や地政学的矛盾はなく、競争よりも協力、意見の違いよりも共通認識が勝るという基調は変わらない」としながらも、3つの注文をつけることを忘れなかった。

その具体的な中身は、

  1. 相互尊重を堅持しパートナーシップを固めること
  2. 開放と協力を堅持し意見の違いに適切に対処すること
  3. 多国間主義を実践し国際秩序を守ること

だ。これらの指摘から中国は、EUが依然として陣営対立とゼロサム思考を捨てきれていないことに不満を抱いていることが伝わってくる。

ドイツ、フランス、スペインなど個別には関係を深められても、EU全体となるとまだまだ壁が高い。そんな印象を残した会談だった。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2025年7月27日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録の上お楽しみ下さい。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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