米国の貿易赤字が増大すれば世界経済が崩壊、解消すれば大不況。戦後の資本主義経済が抱える「超巨大な矛盾」の正体

 

「世界のお金の原資」となっているアメリカの借金

今のお金の仕組みというのは、常に誰かが借金をしていなければ回らない仕組みになっており、その誰かというのがアメリカになっているという見方もできるの
です。

つまり、アメリカが、各国に巨額の借金をすることで、間接的に世界中の銀行からお金を引き出し、そのお金で世界経済は回っているという面もあるのです。

たとえば、日本などはそのいい例です。日本は貿易で稼いでいる国ですが、その最大の稼ぎ先はアメリカです。というより、日本の国際収支の黒字のほとんどはアメリカなのです。

2023年の日本の貿易収支は、約13兆円の赤字でしたが、アメリカとの貿易に限定してみてみると、約715億ドル(日本円で約10兆円)の黒字なのです。

日本人は、アメリカとの貿易摩擦は過去の問題と思っているようですが、決してそうではないのです。1980年代、アメリカの対日貿易赤字がもっとも大きかった年は、1987年ですが、この年、アメリカの対日貿易赤字は、約570億ドルでした。2023年の対日貿易赤字は約715億ドルなので、現在の方が赤字額は大きいのです。

1987年と現在とではGDPの規模がまったく違うので、直接の比較はできませんが、アメリカの対日貿易赤字の規模が、今も相当に大きいことは間違いないのです。

そして、このアメリカから得た貿易黒字の約715億ドル(日本円で10兆円)分の通貨が、日本社会に流れ込んでくることになります。この貿易黒字分があるからこそ、日本社会のお金が回っているのです。

もしアメリカの産業が復活し、日本との輸出入が均衡するようになれば、日本経済はたちまち金不足に陥ってしまいます。

アメリカから見れば、日本との貿易不均衡は面白くないことであり、できれば、輸出入の均衡をはかりたいと考えています。だからこそトランプ大統領は、日本にむちゃくちゃな言いがかりをつけて高い関税を課そうとしてきたのです。しかし、そうなると、日本経済が立ち行かなくなってしまうのです。両国にとって、矛盾はなはだしい状況です。

しかも、これは日本だけの話ではありません。世界中の多くの国が、アメリカの貿易赤字が縮小し、ドルがアメリカ本国に戻ってしまうと、たちまち世界経済は停滞し混乱してしまうのです。

「アメリカの貿易赤字がこれ以上増え続ければアメリカがデフォルトを起こし、世界経済は崩壊するかもしれない」

「しかしアメリカの貿易赤字が解消すれば世界経済は大不況に陥ってしまう」

戦後の資本主義経済というのは、そういう超巨大な矛盾を持ち続けているのです。

(本記事はメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2025年8月1日号の一部抜粋です。「税金はほんのちょっとの知識で簡単に安くなる」「節税はポイ活よりはるかに効率的」「節税は一度やったらやめられない」を含む全文はご登録の上ご覧ください。初月無料です)

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