米国の貿易赤字が増大すれば世界経済が崩壊、解消すれば大不況。戦後の資本主義経済が抱える「超巨大な矛盾」の正体

 

常に赤字になっていなければならないアメリカの国際収支

しかも、アメリカの国際収支(経常収支)はよくなる気配がありません。アメリカの2023年の輸出入額を見てみると、輸出額が2兆452億ドルに対して、輸入額が3兆1,085億ドルもあるのです。輸出額の1.5倍の輸入をしているのです。

そしてアメリカはこの状態がかなり長く続いています。こういう状態が続けば、いくら何でも国は破綻してしまうはずです。というより、今のアメリカは、いつ破綻してもおかしくない状態だといえます。

今のアメリカ以上に対外債務を増やした国は、いまだかつてありません。他の国は、アメリカほど借金はできないし、これほど借金が膨れ上がる前に、デフォルトを起こしています。トランプ大統領が、アメリカの貿易赤字の縮小に躍起になっているのも、これが大きな理由なのです。

しかも、現在アメリカは世界の中央銀行の役割を果たしています。史上最悪の借金国の通貨であるドルが、世界の基軸通貨となっているのです。借金まみれの国が、世界の中央銀行を担っているのです。

これほどの矛盾はないだろうし、世界の中央銀行としてはこれほど危なっかしいことはありません。もしアメリカがデフォルトなどと起こせば、世界経済は崩壊するのです。

このアメリカ・ドルの矛盾は、実は資本主義の欠陥を体現しているものでもあります。というのも、もしアメリカの貿易が赤字じゃなく黒字だったら、アメリカ・ドルは世界中に普及しません。

「アメリカの貿易が黒字になる」と「他国に払う通貨が減り、他国の通貨が増える」ということになります。となると、アメリカ・ドルの他国への支払いが減り、他国の通貨がアメリカに入ってきます。

つまり、アメリカ・ドルが、世界からアメリカ本国に回収され、逆に他国の通貨がアメリカに入ってくることになるのです。

当然、世界全体の通貨量は減り、世界経済は停滞してしまうのです。そのためアメリカは、ドルを世界に供給し続けなくてはなりません。ということは、アメリカの国際収支は、常に赤字になっていなければならないのです。そうしないと、世界は通貨不足に陥り、貿易決済ができなくなるからです。

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