本当の「悪い外国人」とは誰なのでしょうか?メルマガ『佐高信の筆刀両断』の著者で辛口評論家として知られる佐高さんは、ある排外主義批判の演説会での一幕を紹介し、笑うしかないほど理不尽な“外国人”のふるまいと、それに対して沈黙を貫く「日本人ファースト」と宣う面々の矛盾について鋭く批判しています。
差別したい外国人
「悪い外国人もいます」
排外主義を批判する社民党候補の応援で、ある弁士がこう切り出して、みんなちょっとギョッとなった。
すると、その人は、「在日米軍です」と続けたので、笑いがはじけた。
7月3日付の『毎日新聞』「憂楽帳」欄で記者の遠藤孝康が書いている。
「沖縄では米軍機からさまざまな物が落ちてくる。窓、水筒、今年は発火物入りのバッグが落ちてきた。米兵の事件や飲酒運転は絶えない。怒るのに疲れ、あきれ、笑うしかない」
沖縄のコント集団の名前は「お笑い米軍基地」。
企画、脚本、演出を手がけてきた小波津正光は「沖縄で起きていることはもはやコメディである」と言いながら、2010年に出した『まーちゃんのお笑いニュース道場』(琉球新報社)で、こんなネタを披露する。
サッカーの日本代表監督に外国人が決まったことを紹介しながら、首相も外国人にやらせたらと提案し、「2年間2億円でやりませんか?」と交渉して、キューバのカストロを連れてきたら、沖縄の基地問題なんて一発で解決しちゃうという。
「アメリカのことが嫌いだからすぐ追い出しちゃって。外国人監督ならぬ外国人総理大臣、いいと思うけどやあ」
石破茂の進退が問題になっている現在、笑ってしまうには、あまりにも毒というかエスプリの効いた提案である。
2009年の夏は都議選で自公が過半数割れした。
それで小波津は「ジャニーズ党」があってもいいのではと言っている。党首はもちろんキムタク。
ジャニーズ事務所のタレントが候補者になったら、「政見放送が月9のドラマみたいに高視聴率をマークして」今まで選挙に行ったことがなかった女性たちが
こぞって投票所に出かけるt……。
15年後のいま、ジャニーズがこうなっているとは予想できなかっただろうが、そのかわりに、国民民主の玉木雄一郎や参政党の神谷宗幣が“タレント”になっている。
2008年の年末。毎年恒例の「今年の漢字」は「変」だったが、小波津は「貧」だと言う。
「毎年『貧』なんだけどさ。貧乏もいいとこ。財布なんて免許証を入れるためだけに持ってるようなもんだからや」
同じ年の5月15日は本土復帰36年の日だった。
翌日の新聞に「5・15平和行進」の記事が載ったが、「他の記事が凄かった!」として小波津は並べる。
「2米兵を起訴 06年沖縄市タクシー強盗」
「ドル札偽造の海兵隊員有罪」
「海兵隊員暴行事件 きょう軍法会議」
「比女性暴行 伍長を不起訴処分」
「米海兵隊員の2子息 窃盗などで書類送検」
「普天間軍用機で地デジ受信障害」
東京地方区で当選してしまった参政党のさやを含めて、「日本人ファースト」の彼らに米兵の問題はまったく入っていない。
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