被爆80年という節目だからこそ「核武装」をめぐる議論で整理すべき4つの論点。「核保有」と「平和利用」の両立は本当に可能なのか?

 

「核武装の完了前」に国連無視の攻撃を受ける可能性も

2つ目は、核実験の問題です。まず国際法としては、包括的核実験禁止条約(CTBT)というのが発効しており、日本も批准しています。ですが、仮に核武装する場合にはどうしても核実験をしなくてはなりません。

そこで、日本がCTBTから脱退するとなると、これはCTBT体制の崩壊を意味します。そこをどうクリアして、核実験を実現しつつ国を存続させるのかは、全くもって簡単ではありません。

仮に国際法の問題がクリアできたとして、どこで核実験を行うのか、これも大きな問題になります。実験に成功したタイプの既存核弾頭をアメリカなどから買うということも考えられます。ですが、そうなると核保有のリスクだけを日本が負担して、経済的には弾頭を売りつける側は大金を得つつ、使用の判断は向こうが持ったまま、などということになってしまいます。

仮に自前の弾頭で実験するとなると、さすがに大気中では世界が反対すると思いますから、離島でやるのか、大深度でやるのか、一体どこでやるのか、考えただけでハードルの高い話です。

3つ目は、攻撃を受ける危険性です。国際法違反ですから、全く良いことではありませんが、今回のイスラエルとアメリカによる「イラン核施設爆撃」は一種の前例になっています。つまり、核拡散により直接脅威を受ける国は、国連を無視して核拡散を進める国の核施設を破壊して良いというのが既成事実になってしまいました。

例えばの話ですが、アメリカが「核の傘の提供はもう嫌だ」ということになり、日本が独自に核武装するとなった場合はどうでしょうか。日本としては「同じ抑止力を維持するが、弾頭はアメリカのものではなく日本が用意する」ので何も変わらないという態度になると思います。

ですが、相手はそうは思わないでしょう。他でもない日本が核攻撃のできる体制を作ったということになります。そうなると、その国の世論が大きな圧力を加えてしまい、その国の政府としてはイスラエルやアメリカのように、日本の核施設を「核武装が完了する前」に、国連を無視して攻撃するという可能性が出てきます。

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