被爆80年という節目だからこそ「核武装」をめぐる議論で整理すべき4つの論点。「核保有」と「平和利用」の両立は本当に可能なのか?

 

核武装を宣言した瞬間に立ち行かなくなる核の平和利用

4つ目は核の平和利用です。日本は多くの原発を持っており、その使用済み核燃料を、核サイクル、つまりエネルギーの再利用をするためにプルトニウムに加工しています。フランスで頼んで加工してもらったプルトニウムがあり、更には青森県の六ケ所村にある再処理施設で本格的な加工を計画しています。

核サイクルの本命は高速増殖炉ですが、怖がる世論を説得するのが面倒になった文科省はもうやる気がありません。ですから、加工したプルトニウムはMOX燃料といってウランと混ぜて原発で使っています。いずれにしても、日本にはプルトニウムはウジャウジャあります。

その日本が核武装するとなると、たくさん持っているプルトニウムは、国際社会から「平和利用目的ではない」という断定を受けることになります。いやいやフランスもやっているではないかという反論も可能ですが、国際社会は認めないでしょう。

最低でも、六ケ所村施設の閉鎖とプルトニウムの国際管理という制裁を受けるでしょうし、危機感を持った自国の世論を関係国が抑えられない場合は攻撃を受ける可能性もあります。

つまり、核武装を宣言した瞬間に、平和利用が立ち行かなくなる危険があるということです。反対に、G7と周辺国、いや国際社会が合意しない限り、核武装と平和利用を両立させた核政策を進めることはできません。

他にも経済制裁によるダメージの評価など、多くの論点があります。核武装論を禁ずるというのは、そろそろ緩めても良いのかもしれませんが、どの論点も非常にハードルが高いのは間違いありません。ですから、コスパが良いなどということはないと思います。

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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