国内のほぼ全域で山火事の危険が急上昇する可能性も
ここまで人手が足りないのなら、お隣りのポルトガルに救援要請をすればいいのに…と思うかもしれませんが、お隣りのポルトガルでも、今、中部から北部にかけて計8件もの大規模な山火事が発生しており、数千人の消防士が命がけで消火活動を続けているのです。
この8件の山火事のうち最大規模のものは、観光客に人気の風光明媚な山岳地帯ピオダオ付近で発生したのですが、こちらも封じ込めが進まずに拡大し続けているようです。また、北部トランコソで発生した別の山火事も、すでに10日近くも猛威を振るっており、飛び火した別の火災で住民が命を落としたと報じられました。
ポルトガルでは先週末までに約21万6,200ヘクタールが焼失したと発表されましたが、これは過去20年間の山火事による年間焼失面積の4倍を超えるそうです。ポルトガルでも複数の死者が出ている上、現在も山火事は広がり続けているのですから、被害はさらに増えるでしょう。
話をスペインに戻しますが、スペインの国立気象機関AEMETは、先週末の8月16日に、南部の都市コルドバで気温44.7℃を記録したと発表しました。そして「このままではすぐに45℃を超える。そうなると国内のほぼ全域で山火事の危険が急上昇する」と警告しました。すでに「記録上最悪」と報じられているスペインの山火事は、先週末の時点で、ピコス・デ・エウロパ山脈の南斜面にまで達しようとしています。
ここには、フランスからピレネー山脈を超えて、聖ヤコブの遺骨が埋葬されているスペイン西端のサンティアゴ・デ・コンポステーラ市まで続く「カミノ・デ・サンティアゴ巡礼路」があります。巡礼者は流れて来る山火事の煙を吸わないように、マスクを着用して歩いていましたが、いよいよ山火事が近づいて来たため、政府はスペイン内の巡礼路を50キロに渡って閉鎖しました。
また、アニメ『アルプスの少女ハイジ』のブランコが日本人観光客にも人気のレオン州リアニョでは、山火事が及ばないようにと住民らが先週から周辺の草刈りを始めました。ビジャルデボス村のバケツリレーしかり、リアニョの草刈りしかり、もはや住民らが自力で何とかするしかないのです。
先週末、緊急対策局のバージニア・バルコネス局長は「来週の火曜日から気温が少し下がると予想されているが、現時点での気象条件は最悪だ。ここまで気温が高いと消火活動がほとんど進まない」と述べました。また、マルガリータ・ロブレス国防相は「気候変動による巨大な熱波が原因で、われわれは今、過去20年間に一度も経験したことがない規模の山火事と対峙している」と述べました。
でも、複数の現地メディアの記事に目を通してみると、スペイン政府も手をこまねいているわけではありませんでした。今回の南欧の山火事では、スペインとポルトガル、次いでギリシャが大きな被害を受けていますが、スペインでは現在までに、フランス、イタリア、オランダ、スロバキア、ドイツ、チェコなどから支援を受けていると報じられました。
しかし、その支援内容までは報じられていないため、もしもこれらの国々の支援が日本の得意技の「支援金」であった場合、目の前の山火事の消火活動には直結しないことも事実なのです。
この記事の著者・きっこさんのメルマガ









