進次郎でも高市でもない。“キングメーカー復活”を虎視眈々と窺う麻生が担ぎ出しかねない「茂木敏充」の致命的な欠陥

 

岩盤保守層や右派論客の熱い期待を一身に背負う高市氏

だが、それだけではない。後ろ盾である菅義偉元首相が押しとどめているフシがある。まだ若い進次郎にあえてこの時期に無理させて、傷をつけたくないという“親心”だ。

実際、パフォーマンス先行の進次郎氏は人心掌握が苦手で、国民的人気とは裏腹に、党内における仲間づくりはできていない。自民党の農林部会長時代に部会長代理として支えてくれた福田達夫氏が前回の総裁選で小林鷹之氏を担ぎ、離れていったのも痛手だ。

ただし、菅氏との太いパイプを持つ日本維新の会から、小泉氏が総理なら連立入りできるというような“ラブコール”が送られているのは、プラス材料といえよう。進次郎人気をあてこんで、“小泉総理”による衆院の早期解散を願う動きも出てくるかもしれない。

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一方の高市氏はどうか。察するに、心身ともにつらい状況だろう。脳梗塞で療養中の夫の介護もしなくてはならないが、弱音を吐いてもいられない。安倍元首相の後継者を自任し、“岩盤保守層”や右派論客の熱い期待を一身に背負っている。リベラル色の強い石破自民党を嫌って他党に流れた支持者を取り戻すためにも引くに引けない状況だ。

しかし、高市氏が総裁選に立つとして、前回総裁選のような支援の広がりが期待できるだろうか。高市陣営についた安倍派の面々の多くが裏金問題で落選しており、手勢の不足は否めない。党内基盤がなく、20人の推薦人が集まるかどうかも不透明だ。

このため、高市氏が初の女性総理になるには、どうしても前回総裁選で支援を受けた麻生太郎氏の力を頼むしかない。参院選直後の7月23日に麻生氏のもとを訪ねているが、麻生氏の反応はイマイチだったようだ。石破に勝たせたくないという不純な動機による高市支援だったこともあるが、なにより麻生氏に対し感謝の意を表す“アフターケア”が十分でなかったのが大いに響いているらしい。

むしろ、総裁選に向けた活動が目立つのは、この3人のうち最も存在感の薄い茂木氏だ。参院選直後から、側近の1人、笹川博義衆院議員(旧茂木派)をして総裁選の前倒しをめざす署名活動に奔走させ、集めた数の多さによるプレッシャーで両院議員総会開催を実現させた。

そして、7月26日、茂木氏は自身の動画番組に、同じ派閥の鈴木貴子衆院議員を招いて対談。鈴木氏は滔々と総裁選についての意見を述べた。

自民党には衆院、参院とも有為な人材がいる。フルスペックで党員・党友を巻き込むのではなく、国会議員が次のリーダーを掲げましたと、国民の皆さん、次なる我々に審判を、というのが一番わかりやすい。

全国にいる党員・党友の投票も含めた「フルスペック」の総裁選を実施するのではなく、両院議員総会において国会議員と都道府県連の代表だけで選出する“簡易版”にするべきだというのだ。世間的な人気が低いことを自覚している茂木氏は、派閥的な支持取り込みが可能な国会議員を主体とする総裁選に持ち込みたい。その意向を受けて、鈴木氏が代弁したのだろう。

それにしても、両院議員総会よりかなり前の時点で、茂木氏は総裁選が実施されるものと見込み、総裁選のあり方についての党内世論まで形成しようとしていたのである。尋常ならざる意気込みというほかない。

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