進次郎でも高市でもない。“キングメーカー復活”を虎視眈々と窺う麻生が担ぎ出しかねない「茂木敏充」の致命的な欠陥

 

「怒りっぽく人望がない」だけではない茂木氏の致命的欠点

茂木氏は、形式上解散したとはいえ、かつての最大派閥・田中派の流れをくむ平成研究会のトップであったし、今もなお一定の影響力を有する。頭脳明晰で対外交渉力にも定評がある。ただし、怒りっぽく、人望がない。そしてなにより、世間的な知名度に欠ける。それゆえ「選挙の顔」として疑問符がつけられやすいのが総裁候補としては致命的な欠点だ。

茂木氏自身、よくわかっていることだろう。その自覚のうえで、総理・総裁の座をめざそうというからには、何らかの勝算を胸に秘めているに違いない。

もちろん、茂木氏の見立て通り、総裁選が“簡易版”で行われる場合しか、勝ち目はない。そこで、茂木氏が頼りにするのもまた、ともに岸田政権を支えた盟友、麻生太郎氏ということになる。前回の総裁選で高市氏を支援した麻生氏とは一時的に袂を分かった形になったが、その後も会食を重ねており、両者の間のわだかまりは、ほぼ解消されているとみて間違いない。

言うまでもなく、麻生氏は党内で唯一残っているといわれる派閥「志公会」(麻生派、43人)を率い、キングメーカーとして復活を果たすべく虎視眈々とチャンスをうかがっている。

その麻生氏が岸田政権のころから目をつけていたのが国民民主党の玉木雄一郎代表だ。麻生氏はいざとなれば国民民主を抱き込めばいいと見て、岸田政権における自民党幹事長だった茂木氏とともに玉木代表に何度も接触していた。その経緯からいうと、国民民主との連立をセットにして茂木氏を担ぎ、党内の支持を拡大したいと麻生氏がもくろんでも不思議ではない。

むろん、国民民主との連立をめぐっては、高市氏を総裁にしたほうがぴったりはまるという見方もある。玉木氏と高市氏がともに積極財政推進派だからだろうが、保守色の強い高市氏と組むことを国民の支援組織である連合が容認するとは考えにくい。

だからこそ、茂木氏が「玉木と組めるのは俺だけだ」と豪語しているのだろう。茂木氏は最近、何度も玉木氏を自身の動画番組に招いて対談、「年収103万円の壁」政策の財源などをめぐって意気投合しており、玉木氏との連携にはかなり自信を深めているようだ。

ただし、茂木氏はあくまで自分が総理になることを前提とした都合のいい考え方をしているに違いない。それでは、玉木氏を説得できるわけがない。自民党が総理の座を差し出す決断をしない限り、国民民主との連立は実現しないだろう。

今のところ、連立話にすんなり乗ってきそうなのは、維新くらいのものである。しかし、だからといって、自民党がそのリクエストに応え小泉進次郎総理が誕生するということになれば、菅元首相が危惧する通り、浅知恵、経験不足が露呈してメディアの餌食となり、大事に育てるべき人材を使い捨てすることになりかねない。

誰が新総裁に選ばれるとしても、自民党が危機を脱するための“決め手”にはなりそうもない。ならば、しばらくは石破首相のままでいいという意見も党内から出てくるのではないか。

強い自民党の時代は終わった。総裁が必ず総理になれるとは限らない。なれたとしても、野党に頭を下げて協力を求める立場だ。自民党総裁選という舞台そのものが、もはや権力装置としての輝きを失いつつある。

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