自民党の参院選大敗を機に、永田町に吹き荒れ始めた政局の嵐。石破首相は頑ななまでに「続投」にこだわりを見せていますが、与野党は今後、どのような思惑の下でいかなる動きを見せるのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、政治情勢の現在地を詳しく解説。さらに橋下徹氏が報道番組で口にした「維新内の機密事項」とも言うべき発言を取り上げ、その意味するところを考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:「続投」石破に立憲・野田が助け舟。維新は“進次郎”との連立を熱望
続投望む石破に野田が出す「泥の助け舟」と「進次郎丸」に乗りたい維新
これを「阿吽の呼吸」とでもいうのだろうか。8月4日、衆院予算委員会。立憲民主党の野田佳彦代表と石破首相との間で、企業・団体献金廃止をめぐり、こんなやりとりがあった。
野田代表 「比較第1党と第2党が真摯に協議し結論を得て他党に賛同を呼びかけることを覚悟を決めてやらなくてはならない。私と総理でひざを突き合わせて協議して合意していく。そういう作業をする気はありませんか」
石破首相 「第1党、第2党の党首どうしが真摯な議論をすることは大きな意義があると思っています。私の方からもお願いしたい」
この模様を見守っていた国民民主党の玉木雄一郎代表は、予算委員会終了後の動画番組で次のように語っている。
参院選で負けたのに、石破政権が続くことを前提に、協議していきましようと言う。おかしくないか。攻める野党第一党なのに全く政権交代を実現しようという気構えが感じられない。
石破首相の「続投」を望み、助け舟を出す野党第一党の党首。実に情けない。立憲はさきの参院選で改選前の勢力を維持したものの、比例代表の得票数は国民民主党や参政党の後塵を拝し、党内では「事実上の敗北」との声が上がる。負けた政党の党首どうしが「比較第1党」「比較第2党」という呼び方で慰め合い、古くからの政治体制を守っていくことで共鳴し合っている構図だ。
とにもかくにも、石破首相は「続投」の姿勢を崩そうとしない。その開き直りようには、歴代の首相にも見られなかったほどの堅固さが感じられる。
玉木氏は野田氏より後に質問に立ち、石破首相に問いかけた。「そもそもいつまで総理を続投されるんですか」。
石破首相はこう答えた。「私の政権でアメリカと交渉してきた。合意をすることも大変だったが、どう実行に移すかをきちんと見ていかねばならない。不安定な状況が続いていいとは思わない。国難を突破したいが、それがいつなのかは断定できない」。
自民党内で「石破おろし」の動きが出て、政権が“不安定化”していることは石破首相も認めている。だが、トランプ関税をめぐる日米合意の実行が確実になるまでは辞めないし、その時期はわからないと言うのだ。
問題はすでに27.5%が課せられている自動車関税だが、いつ15%になるのか、いつトランプ氏が大統領令に署名するのか、きわめて不透明である。日本政府は15%で合意したと言っているが、ホワイトハウスのウェブサイトに掲載されたファクトシートには、それに関する言及がない。
玉木代表が「総理とトランプ大統領が話して突破するほかないのではないか」と質しても、石破首相は「最後は大統領との間で決めなければならない場面があるかと思う」と話をはぐらかす。
どうやら、自動車関税について、大統領令への署名を催促する気はないらしい。藪をつついて蛇を出すような事態を避けたいのだろう。うがった見方をするなら、自動車関税15%の発動が先に延びるほど、「合意の実行」という「続投」理由を生かし続けることができると計算しているフシさえある。
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