ズルズルと石破政権が続くとも思われない政治情勢の現状
むろん、「石破おろし」は、そんな思惑などにおかまいなく進められていくだろう。
8月8日に自民党は党大会に次ぐ意思決定機関である「両院議員総会」を開催する。ここで、退陣要求が噴出するのは確実だが、党則上、総会で任期途中の総裁を辞めさせることや、総裁選の前倒しの決定はできないとされている。
ならば、リコールという手もある。党所属議員と都道府県連代表者の合計の過半数の要求によって、総裁選を臨時で実施することができる。
しかし、極端なことを言うなら、かりに新たな総裁を選出しても、石破首相が辞任を拒否し、内閣不信任決議もされなければ、石破内閣をそのまま続けることが可能だ。もちろんその場合、首相指名選挙は行われないため、首相と自民党総裁が別人という総理・総裁分離状態がしばらく続くことになる。
1978年にその実例がみられる。12月1日の自民党総裁選で大平正芳氏が福田赳夫首相を破って新総裁になったが、福田首相は「大平君に政権担当能力はない」とすぐには辞任せず、約8日間の総理・総裁分離が続いた。12月7日になってようやく内閣総辞職を表明したため、同9日に首相指名選挙が行われ、大平氏が首相に就任した。
つまり、首相本人が「辞めない」と言い張る場合、政権から引きずり下ろすのは並大抵ではない。それなら、いつまでもズルズルと石破政権が続くのだろうか。そうとも思われないのが、今の政治情勢だ。
自民党総裁選が近く行われ、首相が交代することを不動の前提として政局は動き出している。後継総裁候補として名前が上がっているのは高市早苗氏、小泉進次郎氏、小林鷹之氏、林芳正氏、岸田文雄前首相といったところか。
なかでも高市氏は最近、総裁選の決選投票で高市氏を支持した麻生太郎氏や、旧安倍派5人衆の1人、西村康稔氏と面会したことをもって“ポスト石破”レースに意欲的と報じられている。昨年の衆院選で高市氏を支援する議員の多くが落選したことがマイナス材料といえるが、萩生田光一氏のバックアップしだいでは、かなりの数をまとめられるかもしれない。
高市氏が首相になったら積極財政策で共通する国民民主党や参政党と連立する可能性があるのではないかという見方も一部にはあるが、これはメディアの“先走り”観測というべきだろう。
今のところ自民党内で、誰を担いでどのような政権をつくるのかといった明確なビジョンを持ったグループが旗を揚げているわけではない。
むしろ、連立政権の枠組みについて、党外から“ラブコール”が送られているのが、最も具体的な動きといえる。7月27日のフジテレビ系「日曜報道」で、日本維新の会の内輪話を知らせてくれたのは、元大阪府知事の橋下徹氏だった。
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