統一教会を襲う教団創立以来の危機。韓鶴子総裁へ“逮捕状請求”の衝撃と「日本への余波」

 

押収された韓鶴子総裁からの多数の「指示メール」

韓国の特別検察官は18日、請託禁止法違反などの容疑で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の韓鶴子総裁(82)の逮捕状を請求した。裁判所は22日に逮捕状発付の可否を決める本人を呼び出して審査を実施する。

韓国の前大統領夫人へのネックレスなどの供与など尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領夫妻への政治工作、与党だった「国民の力」の権性東議員への金銭授受疑惑など、統一教会総本山の韓鶴子総裁への捜査が進展している。

教団のナンバー2だった尹英鎬(ユン・ヨンホ)前世界本部長の逮捕に続いて、教団に便宜を計ってきたと見られる権性東(クオン・ソンドン)議員も逮捕された。

特別検察の3度の事情聴取を拒否していた韓鶴子総裁は、9月18日朝10時についに出頭、休憩をふくめて9時間半も検察庁舎に滞在した。総裁は容疑を全面否認。そのため検察は逮捕状を請求、容疑を否認しているため身柄が拘束され、起訴される流れがありうる。

韓鶴子総裁は、統一教会の文鮮明教祖の2番目の妻として17歳のときに結婚。文との間に14人の子どもがいる。2人は教団内で「真(まこと)の御父母様」と呼ばれてきた。

2012年9月に文鮮明教祖が92歳で亡くなると、教団は大きく3つに分裂。韓鶴子総裁は、自分は祖母、母、自分の3代にわたって女性の系譜をひき、生まれたときから「天の独生女」であり、結婚することで、文鮮明教祖の原罪を拭ったと主張。

教団のそれまでの教えをくつがえす内容だが、古参信者たちは「おかしい」と思いながら、宗教ゆえに、求心力を保っている。韓国と日本の教団は韓鶴子総裁が支配、いまに至っている。

韓国の捜査の行方が逮捕なのか在宅起訴なのか。本稿執筆時点では不明だ。しかし特別検察は前大統領夫人への供与、国会議員への贈与などの原資が何かを解明していくことになる。

尹英鎬(ユン・ヨンホ)前世界本部長はトラック2台分の教団資料を持ち出したという。韓鶴子総裁からの多数の指示メールも押収された。

核心は日本の信者の献金などからどれだけの送金が韓国本部になされていたかである。韓鶴子総裁が文鮮明教祖と同じようにラスベガスでカジノに興じていたことはよく知られている。日本人信者たちが現金12億円をラスベガスに運んだと『週刊文春』は報じた。

資金の流れはこれまでに内部資料の流出などでその一端が明らかになっていた。1975年7月に文鮮明教祖が送金命令を発し、10年間に約2,000億円が送られたという元幹部の証言もある。安倍晋三銃撃事件以降は送金がとまったとされるが実態は不明だ。

韓鶴子総裁と教団への捜査がこの問題に鋭いメスを入れる可能性がある。それは日韓の長い教団関係の実態解明に結びついていく。韓国の教団本部は、7月18日に家宅捜索が行われたことについて7月24日になって声明を発表、不当だと次のように糾弾した。

2025年7月18日、世界平和統一家庭連合(統一教会)を対象に、「キム・ゴンヒとミョン・テギュン・ゴンジン法師に関連する国政介入および違法な選挙介入事件等の真相究明のための特別検察官チーム」が実施した家宅捜索に対し、家庭連合本部と世界194カ国の1,000万信徒は強い遺憾の意を表明するものです。

韓鶴子総裁への検察捜査へのコメントは9月19日現在で出されていない。22日の司法判断の結果を踏まえて見解を出すのだろう。

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