フランクル『夜と霧』を思い出すとき…イスラエルとガザに見る“語られぬ平和”

 

ホロコーストは、イスラエルという国の複雑さを紐解く重要なファクターではあるが、今、ガザで起こる虐殺が答えだとすれば、あまりにも人類は愚かであることに気付かされる。

イスラエルとガザのニュースが報じられた後で、テレビ画面は自民党の総裁選に切り替わる。

5人の候補者たちが景気、外国人、社会保障、それぞれの対策を語るが、残念ながら、そこにイスラエルをはじめとする国際問題への言及は少ない。

ティックトックの動画では、小泉進次郎氏が牛丼を食べ、林芳正氏がピアノを弾きながら歌い、茂木敏充氏が数学の問題を解き、高市早苗氏が英霊を弔う言葉を並べ、小林鷹之氏は経済政策をはつらつと語る。

どれも、自らが発するメディア機能を使って、マス化した視聴者に意図したメッセージを届ける。

そのメッセージは、揶揄されたり、攻撃されたりの、手洗い歓迎を受けるが、デジタルの言論世界ではむしろ、称賛されるばかりなものは、信用度も低くなるから、肯定と否定がほどよいのがちょうどよいのだろう。

簡単に自らのメッセージを伝えられる言論空間だからこそ、平和も語ってほしいと思う。

イスラエルの問題にどのような考えを持って臨めばよいか、日本人の多くが戸惑っているにも見える。

2年間も攻撃され続けている地域の地獄をニュースで見せられても、平和の道筋を示せない社会には、それらの情報は希望のない絶望でしかない。

それは「夜と霧」の中で見た、幾重にも積まれた死体のように、ただただ憎しみと苦しみがあるだけの情報だ。

次の首相になろうという人に臨むのは、希望の言葉。国の進路を先導する役割として、国際社会の一員として、平和構築のプロセスを語り、また実行できる人がいてほしい。

いや、実行するのは難しいから、せめて希望を語ってほしい。

平和に向けてのメッセージを発することから、すべてが始まる。

今のままでは、無関心になってしまいそうで、怖い。

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障がいがある方でも学べる環境を提供する「みんなの大学校」学長として、ケアとメディアの融合を考える「ケアメディア」の理論と実践を目指す研究者としての視点で、ジャーナリスティックに社会の現象を考察します。

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